開幕絶望の清原和博に代わる、巨人の4番・高橋由伸に対し、世界の王がお墨付きを出した。
開幕カードの前哨戦。3日、大分で行われた中日とのオープン戦で第1打席にレフト前のヒットを放ち、3打席で交代した4番・高橋。
清原が復帰するまでのオープン戦だけの代役のはずが、そのまま開幕戦でも4番に座る。
清原は左太モモ痛が治らないうちに、右足の太モモまで痛めたのだから、どうにもならない。
『清原、開幕絶望』という大ニュース扱いになったが、先に福岡ドームで巨人と3連戦したダイエー・王監督は、世界の王の目で4番・高橋にお墨付きを出している。
「あれだけ慎重に調整しながら、またケガをするとはわれわれには、ちょっと信じられないことだ」と、清原のケガには首をヒネりながらも、高橋にはエールを送ったのだ。
「高橋の4番はいいんじゃないかな」と力強く太鼓判。
「不動の4番の松井がいなくなったことで、やっと『自分がやらなくては』という自覚が出てきた。結構なことだよ」
巨人の4番としての自覚が芽生えてきたことを評価する。
それまで巨人の大先輩として、はがゆい思いをしてきただけに、なおさら喜びも大きいのだろう。
「高橋は、去年まで巨人の生え抜きの主力としての意識が薄かった。本当はベーブ・ルースとルー・ゲーリック、ONのようにならなければ、ウソだったんだから」
ヤンキースの第1期黄金時代を築いた、714本塁打の"球聖"ベーブ・ルースと3冠王、493本塁打の"鉄人"ルー・ゲーリックのコンビ。
さらには巨人軍の第3期黄金時代、不滅のV9を達成した868本塁打の"世界の王"王貞治と444本塁打の"ミスター・ジャイアンツ"長嶋茂雄のONコンビ。
日ごろから「松井は不器用だから練習、練習で一歩、一歩階段を上がるタイプ。オレに似ているね。高橋はミスタータイプだな」と、口にしている王監督のこと。
高橋と松井のコンビに対し、日米の最強コンビと並ぶような大きな期待をかけてきただけに、高橋に裏切られ続けてきた思いなのだ。
それも無理はない。ルーキーイヤーに3割、19本塁打、75打点の成績をあげ、2年目には3割1分5厘、34本塁打、98打点を記録。
「由伸は天才打者だ。松井より先に3冠王を取るかもしれない」と、長嶋監督に言わせたほど。
ところが完全に尻すぼみ。3年目が.289、27本、74打点。4年目も.302、27本、85打点。昨シーズンにいたっては、ケガに泣き.306の打率はともかく、17本塁打、53打点の成績に終わっている。
天才打者から並に成り下がった高橋が、松井のヤンキース入りでようやく目が覚めた。王監督はそう認める。
「僕の後には由伸がいる。巨人の4番は心配ない」と、松井は後継者に高橋を指名してメジャー入りしただけに、世界の王のお墨付きを誰よりも喜んでいるだろう。
[夕刊フジ2003年3月4日]