ダイエー・王、「助っ人探し」不満頂点


 12日にダイエー・王監督が約2週間の予定で渡米する。大リーグのウインター・ミー ティング視察もするが、中南米での新外国人選手探しが主目的。球団側に対する不信 感からの怒りの直接渡米だ。

 「オレが行かなくても、いい外国人選手が取れるなら、わざわざ行かないよ」

 王監督の偽らざる本音だ。球団に任せていたら、思うような外国人選手が獲得でき ない。直接行動しかないだろう。

 ダイエーは金がないから、格安で掘り出し物が見つかりそうな中南米まで足を伸ばす。

 米国本土でなく中南米だけに、事前のコンタクトも大変で、王人脈の球界関係者が 奔走した。

 新外国人探しの渡米はイコール、フロントに対する不信任案提出と同じだ。

 「監督が直々に外国人選手を取りに渡米するのは好ましいことではない。本来フロ ントの仕事なんだから」という球界関係者の弁は正論だが、現実的にはフロントなど 存在しないのと一緒だ。

 小冊子まで作って、「いかにダイエー球団は地元と密着。観客動員を伸ばしたか」 という自己PRばかりしている球団社長に象徴される。

 そのくせ都合のいい時だけ"世界の王"のネームバリューを利用する。

 11月20日に行われたドラフト会議の翌日、ダイエー本社のPRのため、王監督を本社 社長と店頭に立たせる無神経ぶりに多くの球界OB、関係者が憤慨している。

 「人のいい王さんを利用するのもいいかげんにしろ。このままでは一方的に悪用さ れるだけだから、王さんも、もうダイエーに見切りをつけた方がいい」

 何と王監督に対しダイエー退団勧告の強硬論まで出るほど。確かにダイエーの王監 督への対応はひどすぎるの一語だ。

 ただ、王監督とすれば、来季3年ぶりのV奪回しか頭にない。そのための戦力整備に 抜かりがあってはならないのだ。

 何を言ってもわからないフロントを相手にしてもどうにもならない。自分でやって みせるしかないのが現実だ。

 が、ものは考えようだ。今回の渡米を来季だけに限らず、将来的に生かしてしまえ ばいい。

 「メジャーにも顔が利き、世界的な視野で物が考えられる王さんをぜひコミッショ ナーに」という王コミッショナー待望論があるのだから、その布石にする。

 「今年の大リーグのウインター・ミーティングは、100周年記念でナッシュビルで開 催されるから、王さんが行くのはちょうどいいと思う。王さんの知名度は抜群だし、 大歓迎される」とメジャー通の球界関係者が言う。

 記念すべき大リーグのウインター・ミーティングで"世界の王"を改めて強烈にア ピール。

 中南米という新たな地区でも知名度を上げるのにいい機会だ。

 ダイエーに利用されるだけでなく、たまには逆利用してやるのもいい。球界OB、関 係者、ファンも拍手喝采だろう。

[夕刊フジ2002年12月11日]