原、伊原に見る現代名将の条件とは…


 新人監督・原辰徳、伊原春樹率いる巨人、西武の大独走で、改めてわかった現代の成功する監督の条件とは−。カリスマ性不要、真面目が取りえetc。時代は確かに変わった。

 チーム内外から「カリスマ性のない長嶋茂雄」と言われた巨人・原監督が、勝てば官軍、今や手のひら返しで名監督扱いされている。

 清原、高橋由に代表される、主力選手の相次ぐケガにもかかわらず、斉藤、福井、宮崎、山田ら続々と新戦力が台頭。

 「今季、野手で一軍に上がっていないのは、2人だけ。こんな年はないんじゃないか」と、巨人OBが仰天するほど、一、二軍の大胆な入れ替えを断行。チームを活性化しているのは事実だ。

 気恥ずかしくなるような、『チーム愛』なるキャッチフレーズをぶち上げ、それを平然と実行できるのも、「カリスマ性のない長嶋茂雄」だからこそか。

 カリスマ監督ならば、常に周囲の評価を気にしながら事を運ぶが、カリスマ性がなければ、つまらない気苦労をすることはないからだ。

 「若いというけど、長嶋さんだって40歳で監督になったじゃないか」と、反論していた、44歳の原監督に対し、今や文句を言える人はいない。

 片や、12球団一地味で、ネームバリューのない西武・伊原監督。それを逆利用だ。

 「監督と呼ぶな。コーチに戻ったときに困るだろう」とナインに注文した話は有名だが、名三塁コーチャーとして知られた自らの売りをそのまま活用している。西武時代に同じ釜の飯を食った球界OBがこう語る。

 「巨人との日本シリーズで、クロマティの緩慢なプレーを見て、一塁走者を一気にホームインさせたことが伊原三塁コーチャーの伝説になっているが、実は、勝手な判断でサインを出して、森さん(現横浜監督)を怒らせたことが何回かあるんだ。阪神でもそれでノムさん(野村監督)と衝突したんだろう。でも、今度は監督として三塁コーチャーにいるのだから、誰にも文句を言われない。全責任を負っているわけだからね」

 芸は身を助ける。三塁コーチャーのスペシャリストとしての才能を最大限に生かしているのだ。

 昨シーズン、共に二軍監督を経験した、ヤクルト・若松勉、近鉄・梨田昌孝両監督が初優勝して、人柄のいい、地味な監督が成功する時代到来を予感させた。

 そして、実際に今季もその路線で、巨人・原、西武・伊原監督が就任1年目に胴上げされようとしている。

 監督新時代を予言したのは、ダイエー・王貞治監督だ。

 「原監督が地味だって? かえって選手にとっていいんじゃないか。これまでは、勝てば長嶋さんの手柄。負ければ、選手の責任。今度は選手の働きが正しく評価されるわけだから、やる気になるんじゃないか」

 スター監督の弊害がなくなる強みをズバリ指摘したのだが、皮肉なことに、王ダイエーの苦戦もそれを逆に証明した格好か。

[夕刊フジ2002年8月27日]