貯金3で前半戦を終えたダイエー。王貞治監督は今季、優勝を逸すれば潔く身を引く決意のようで、中内正オーナー(42)以下、球団幹部は最近のチームの不振に頭を抱えている。
5月中旬、高塚猛球団社長(55)のオーナー代行就任が発表された。これについて中内オーナーは「中内が球団を私物化しているとの声がありました。そうではなく、二人三脚でやっているということを示したかった」と説明した。
これは、再三にわたって浮上する球団株放出の事態を避けるための意味合いが多分に含まれている。
今年2月、ダイエー本社が、中内オーナーが所有する球団株を無償で提供することを要求。これを中内オーナーが拒否して、現在は凍結状態。しかし、銀行筋のダイエー再建「新3カ年計画」では、中内一族のホークス球団などの福岡関連事業からの総退陣と、保有する株の放出が織り込まれている。
とにかく、中内オーナー、高塚オーナー代行は球団、ホテル、ドーム球場の「福岡3点セット」を保持したいと躍起だが、当面の危機を回避するには、王監督のネームバリューが不可欠である。
「九州の財界も王監督だから応援するという人が多い。それに、先の台湾での興行も、国民的英雄の王さんがいたから成功したんです」(球団関係者)
ダイエー本社から毎年、広告宣伝費の名目で15億円もの“献金”を受けてきたが、いまや全面カット。一方、選手の年俸は年々増え続け、今季の総額は12球団4位の23億5690万円(昨年は21億4670万円)。
支援金が入らなくなり支出が増えるなか、九州財界のバックアップは、なくてはならない。それが、王監督退陣とともに熱気が冷めれば…。
「王さんは球団批判を公にはしないけど、補強費や人件費のシビアな削減にうんざりしています。そろそろ勇退の潮時と昨年あたりから考えているようです」とは、王監督と親しい関係者。
当の王監督は「われわれの商売は、1年1年が勝負。シーズンが終わった時点で進退を決める」と言い続けてきた。
しかし昨シーズン終盤、フロントが王監督の続投を発表。この先走りに王監督が不快感を露にしたため、フロントが慌てて陳謝した。何とか元のサヤに収まったものの、フロントとはギクシャクした関係にある。
ともあれ、今季2年連続のV逸なら、勝負師としては自ら進退に触れざるを得ない。フロントが必死に慰留しても、カードを王監督に握られており、チームの好成績を祈るしか手がない。ペナントの行方次第では今オフ、ダイエー恒例の迷走劇に発展しそうだ。
[夕刊フジ2002年7月11日]