長嶋、王、星野がねらう怪物とは…


 秋のリーグ戦で、怪物・江川超えの六大学史上、最多の奪三振記録を目指す、即戦力左腕の早大・和田毅を巡る大争奪戦。過熱一途のその内幕と、今後のキーマンを明かす。

 注目された、同じドラフト自由獲得選手枠の亜大・木佐貫洋と激突の全日本大学選手権決勝は、19日に雨天順延されたが、早大・和田を巡る大争奪戦は、水を差されることはない。日に日にエスカレートするばかりだ。

 巨人、阪神、ヤクルト、中日のセ・リーグの4球団と、ダイエー、近鉄、オリックスのパ・リーグの3球団が入り乱れて、仁義なき戦いが繰り広げられている。

 「金にものを言わせる巨人が参入してきたから、相場が高騰している」と、他球団スカウトが嘆くように、一部では総額20億円争奪戦ともいわれている。

 札束が飛び交うだけではない。1球団でも多く降ろさせようと、謀略戦も仕掛けられている。

 「和田本人はアンチ巨人ファンだから、巨人だけはない」という、アンチ巨人説がささやかれれば、その一方で、「在京球団志向が強い」との情報が流れる。

 ネタ元は、互いにケン制し合う、球団同士だけに、裏の取れない怪情報は、今後、さらに増えるだろう。

 怪物といわれた、巨人・江川卓が、法大時代に作ったリーグ記録にあと43個と迫る通算400奪三振。秋のリーグ戦での更新は確実視されているからだ。

 江川を超える新怪物誕生となれば、さらに商品価値がハネ上がるばかり。

 こんな和田を射止める球団はどこか、切り札は何か。巨人・長嶋終身名誉監督、阪神・星野監督、ダイエー・王監督の三つドモエ戦が注目される。巨人関係者がこう語る。

 「日本代表候補選手として、ダイエーの高知キャンプに参加した和田を見て王さんが一目ぼれ。『いいねえ、ウチにぜひ欲しい左腕だよ』と、左腕不足に悩んでいるだけに、即断即決。右腕の九州共立大・新垣とともに自由獲得選手枠で狙っている。ところが、高知キャンプへ寺原を見に来た長嶋さんが、和田にゾッコン。あれだけほれ込んでいた寺原どころではなくなってしまった」

 巨人・長嶋終身名誉監督vsダイエー・王監督の一騎打ちは、実は高知キャンプから始まっていたというのだ。

 そこへ、阪神・星野監督が絡んでくる。「取れる選手を取るのでなく、必要な選手を取らないかん」と、阪神の伝統的な安全策ドラフト打破をぶち上げ、和田獲りに執念を燃やしている。

 それでなくとも、「いつまでもONの時代ではない」と、ONに引導を渡すことを自らの使命とする星野監督のこと。巨人の専務取締役であり、終身名誉監督の長嶋氏が動き、ダイエー・王監督が前面に出れば、黙っていないだろう。

 ドラフト戦線でも口説き名人として知られる、ビッグ3の激突。最後に笑うのは誰か。

[夕刊フジ2002年6月19日]