3・30開幕を前にして、巨人フロントが、ダイエー・王監督にSOS。巨人打線で唯一不安視される、オープン戦絶不調だった高橋由に関して、緊急アドバイスを求めていた。
いよいよ注目の星野阪神との開幕2連戦。数だけは多いが、名前先行、実態の伴わない巨人投手陣は不安だらけだが、「打線に関しては全く心配ありませんよ」と、テレビの特別ゲストを務める長嶋終身名誉監督も太鼓判を押す。
ところが、ご自慢の超重量打線の中で、例外がいる。オープン戦で、全く結果が出なかった高橋由だけは、見切り発車になってしまった。
現場サイドは、「それほど心配していない」というが、球団側にとっては深刻だろう。
今シーズンオフ、FAの資格を取得する松井が、ウワサ通り、メジャー球団へ移籍するようなことにでもなれば、お家の一大事。看板選手として、高橋由にかかってくる比重は計り知れない。
そんな事情もあるだけに、フロント首脳がジッとしていられないのも当然か。
東京ドームでのオープン戦最終戦になった、24日のダイエー戦。王監督に対し、直接行動。泥沼にあえぐ高橋由に関して、アドバイスを求めたのだ。
世界の王として名を残している、古巣・巨人のことは、他人事ではなく、無関心でいられない王監督。
「ぶきっちょで、練習によって一段ずつステップアップしていく松井はオレに似ているね。天才肌の高橋由はミスター・タイプだな」と、日ごろから分析しているが、フロント首脳からのSOSに親身になって相談に乗った。読売、巨人内部にも広い人脈があるから、最新情報にも事欠かない。
「よく練習はしているようですからね」と、高橋由の練習態度にも精通している。その上で、技術論でなく、精神面の自立の問題を指摘した。
「高橋由の場合、どうしても、チーム内で二男坊、三男坊の扱いになってしまうでしょう」と、ズバリ核心を突いたのだ。
番長の異名を取る清原。今季、初の3冠王獲得へ最短距離にいる、選手会長の松井。この2人がいるから、高橋由はどうしても、第3の男、三男坊的な位置付けになってしまう。
実際に、昨年くらいから、清原との急接近が目立ち、「将来、球団の看板を背負って立つ選手だから、あまり群れるようなことがあると困る」という声が、球団関係者からも出始めていた。
王監督は、そんな甘えが出やすい立場を鋭く指摘したのだ。自身、ONコンビでV9巨人を背負っていたころも、厳しかった。
後輩の土井、柴田氏らに対して、「いつまでもオレの後をついてこないで、たまには若い選手を飯に連れていってやれ」と、突き放したこともある。
そんな世界の王が、解決策としてあげたのが、精神的な独り立ちへの最善方法だ。
「何よりも早く結婚させることですね」と、フロント首脳に対し、結婚をすすめた。プロ入り5年目、4月3日で27歳になる適齢期の高橋由だけに、説得力のある王監督の弁だ。
結婚して公私とも、ひょう変した清原という、身近に最高のお手本もある。長嶋前監督に天才と呼ばれながら、足踏み状態。ここへきてOBたちから「プロ入り1年目が1番よかった」と、シビアに言われ出した高橋由。清原もそう言われ続け、結婚してプロ入り16年目の昨シーズン、自己最高の成績をあげている。
清原を尊敬するなら、王監督のアドバイスに従うのがベストの選択だろう。
[夕刊フジ2002年3月30日]