注目の3・30原巨人vs星野阪神開幕戦(東京ドーム)へ向け、巨人・長嶋茂雄終身名誉監督が、滑り込みの“最終調整”。24日の原巨人vs王ダイエー戦で、ようやく初のオープン戦視察を果たしたのだ。
「ウーン、久々ですからね、ここは。今、だれが打っているの。高橋? 高橋は今、悪いからね」
こう言いながら、東京ドームのグラウンドに飛び出した長嶋さん。打撃ケージ後方にへばりつき、絶不調の高橋のバッティングを注視。かと思えば、対照的に絶好調の4番・松井と何やら話し合い。
ユニホームこそ着ていないが、終身名誉監督らしい動きの長嶋さん。その後も、王監督とジックリ話し込んだり、松中と言葉をかわしたり、相変わらず精力的。ビジターのダイエーの練習時間終了間際までグラウンドに立ち尽くした。
「セ・リーグが巨人、パ・リーグはダイエー」と、長嶋さんが両リーグの本命にあげる同士の対戦。
「ワンちゃんとも話をしたいし−」と、満を持してのオープン戦初視察ともいえるが、実際は駆け込みだ。
原巨人にとって、オープン戦最終の25日のロッテ戦(千葉)を前にした、東京ドームでの最終戦。王ダイエーの方は、この日の巨人戦がオープン戦最終戦だからだ。
9球団のキャンプを徹底視察。各地に長嶋旋風を巻き起こし、「オープン戦もできる限り見たい」という希望を持っていたが、さまざまな仕事の依頼が殺到して公約を果たせず。
話題の星野阪神vs原巨人のオープン戦が行われた17日の甲子園に初めて顔を見せたが、滞在時間わずか30分。阪神OBルームで、高田繁・前巨人二軍監督を司会役にした、阪神・星野監督とのラジオ対談の収録をしただけ。試合を見る間もなく、東京で待ち構える仕事のために、Uターン。
「エッ? 長嶋さんがきていたの? 本当?」と、巨人ナイン、関係者が驚く電光石火の早業だった。オープン戦とのニアミスに終わった甲子園。この日の巨人vsダイエー戦が、まさに念願のオープン戦初視察になったのだ。
他の巨人戦の前売り状況はよくないが、このカードだけは別。切符が飛ぶように売れた、全国野球ファン注目の30、31日の巨人vs阪神の開幕2連戦をゲスト解説する長嶋さんにとっては、ラストチャンスの滑り込みセーフだった。
「1、2時間くらいしか見ないで何がわかるのかな?」と、キャンプ取材を簡単に済ませる評論家に対して、厳しい言葉を投げかけただけではない。有言実行。自らは練習最後まで、特打などのスペシャル練習にまで付き合った。
そんなキャンプの“貯金”があるから、オープン戦はテレビ観戦でOKとはいかない。たかが1試合、されど1試合。見るのと見ないのとでは大違い。
「ダイエーの森脇コーチのノックは素晴らしい。あれぞプロフェッショナルだ」と、ダイエー・高知キャンプ視察で絶賛した、森脇コーチから、東京ドームの新しい人工芝に関しても、話を仕込んでいる。
「今季のセ・リーグは本命・巨人、ダークホース・阪神」と、断言している長嶋さん。定評ある“カンピュータ”で、注目の開幕2連戦、新たにどんな予言をするか。聞き逃せない。
[夕刊フジ2002年3月25日]