ダイエー身売り騒動再燃で王の去就は?


 小休止したものの、いつまた再燃するかわからない、ダイエーの身売り騒動。最大の被害者は、王監督だ。早ければ、今オフにも勇退を視野に入れているのに、身動きできない状況に追い込まれかねないからだ。巨人復帰を熱望する巨人OB、球団関係者も気が気ではない。

 世論の反発もあって、ダイエー本社が中内正オーナーへ突き付けた「球団株40%の無償提供、オーナー職解任」の動きは、一時ストップしている。

 「本社の要求は拒否した。自分がオーナー職にいなくなれば、福岡から球団がなくなってしまう」と、中内正オーナーが、自らの生き残りのために、身売りの危機感をことさらあおったからだ。

 地元・福岡では不買運動の動きまで伝えられ、ダイエー本社はゴリ押しを回避。凍結状態にした。が、問題は先送りになっただけで、何も解決したわけではない。

 「いくら中内オーナーが頑張っても解任は時間の問題だろう。ダイエー本社が創業者の中内一族の責任追及をあきらめたわけではないんだから」と、球界関係者もシビアに見ている。

 中内オーナー解任→ダイエーの身売り騒動再燃は、時間の問題といえる。そうなると、最大の被害者は王監督だ。

 「いつまでもONの時代ではない。常勝チームの基盤はできたし、そろそろ球団も次の監督を探すだろう」と、巨人・長嶋前監督に次いで、勇退のタイミングを計っている王監督にとって、身売り騒動は大きな障害になるからだ。

 「王監督が辞めたら、ダイエーは解散状態になるだろう。王ダイエーだからこそ、身売りの対象になるので、王監督がいなくなったら、買い手がつかなくなる」と、チーム内外の声は一致している。

 「王監督は、今までで十分にダイエーに報いている。これ以上、ダイエーに利用される筋合いはない。早く見切りをつけて、辞めた方がいい」と、ダイエー関係者の一部からも同情論。勇退を望む声があがっているのだが、ダイエーファンの心理からすれば、そうはいかないだろう。

 「あの王さんがダイエー・ホークスを見捨てるわけがない」というのが一般的な世論になる。

 身売り騒動の渦中で勇退すれば、王監督が球団を見捨てた格好になってしまう。律義で、筋を通す王監督としたら、ファンのために身動きできなくなる恐れがあるのだ。

 そうなれば、「ミスターも2度監督をやったのだから、王さんがもう一度やらない方がおかしい」と、王監督の巨人復帰を待ち望むOBたち、球団関係者にとっては、最悪の事態になる。

 5月20日で62歳になる王監督にとって、巨人復帰のタイムテーブルは、ギリギリの線になっているからだ。

 「渡辺オーナーが言うように、王さんの性格からして、ダイエーを退団してすぐに巨人はあり得ない。今季限りでダイエーを辞め、ネット裏で2年ほど充電。原内閣が3年くらいの短命で終わったら、スムーズに王監督復帰が実現する」というのが、王監督の巨人復帰熱望派のシナリオだ。

 それだけに、ダイエーの身売り騒動は、対岸の火事どころか、火の粉をモロにかぶることになる。

[夕刊フジ2002年2月28日]