ダイエー・王監督が、長嶋分析に異論。Ｖ奪回へ松坂・西武でなく、連覇を狙う梨田・近鉄を最大のライバルに指名した。
「高めのストライクゾーンが上がることは、ブルペンが厚い西武にとって強力な材料になるでしょう。松坂君だけでなく、西口君、石井君、豊田君ら速球投手がそろっているし−」
西武・春野キャンプを視察した巨人・長嶋終身名誉監督は、こう断言した。
松坂を筆頭に１４５キロ以上の快速球を武器にする投手が名前を連ねる強力な西武投手陣にとって、高めのストライクゾーン拡大は、神風のようなもの。恐怖の西武投手陣というのだ。
王監督も松坂がさらに脅威になることは否定していない。
「松坂のあの高さのまっすぐをストライクにとられたら、まず打てない。しかも、バッターはどうしても高めに意識がいくから、低めの速球にもついていきにくくなるよね」
それでいて、長嶋分析とは違い、Ｖ奪回の最大の敵として西武をあげない。
「西武が最大のライバル？ いや、怖いのは近鉄の方ですよ」と、連覇を狙う梨田・近鉄に神経をとがらせる。
「近鉄は優勝したのに、投打とも積極的に補強している。日本ハムにいたウィルソンを取り、オリックスからＦＡ移籍した加藤も加わった。こういう姿勢が怖いんだよ」
高めのストライクゾーン拡大という、タナボタ的な恩恵をこうむる西武よりも、リーグ連覇して、悲願の初の日本一達成へ、積極的な補強をした近鉄に脅威を感じているのだ。
「上がった高めのストライクゾーンは、狙って投げるわけじゃないからね。結果的にそこにいき、ストライクになるわけだから」という本音もある。
それに対して、近鉄へのライバル視は正真正銘、本物だ。
「近鉄はいいキャンプをしていますよ。昨年、優勝した自信と、日本一になれなかった悔しさが、チームを活性化している。補強も成功。ウィルソンも間違いなく打つし、加藤も１０勝するのでは−」
高知キャンプを訪れる評論家、他球団の編成担当からこんな話を聞く度に、「そうだろう、だから近鉄は脅威なんだ」と、語気を強める。自らの分析に間違いないと納得すると同時に、近鉄対策に頭を悩ますのだ。
[夕刊フジ2002年2月15日]