ああ悲惨、ダイエースタッフ年収半減


 ダイエー・王貞治監督が球団に今季初激怒だ。昨オフ、容赦ない人件費削減に耐えかね、4人の一軍トレーナーのうち3人が退団してしまった。まさかの珍事に、王監督は久々にフロント不信を爆発させた。

 先の身売り騒動で明らかになったように、ダイエー球団は黒字捻出(ねんしゅつ)のため、徹底した経費削減を行っている。あるトレーナーの場合、一昨年の年俸1000万円が昨年の時点で800万円へ。そして来季の提示が500万円と、2年間で半減。これではどれだけ現場に愛着があっても、続けていく方が無理だ。

 その結果、田中和彦チーフをはじめ4人のうち3人のトレーナーが退団する事態に発展した。キャンプイン直前になって球団は代役を補充。4人体制に戻したが、王監督の怒りは収まらない。

 「トレーナーというのはね、一朝一夕にできる仕事じゃないんだ。お互いが長年の信頼関係を築いてはじめて、選手は無防備な背中をトレーナーにさらすことができるんだよ。体を知り尽くしているトレーナーの存在がいかに大事か、君が出張先のホテルでマッサージを受けるのと一緒にされちゃ困るんだよ」

 一気にまくしたてた王監督。もちろん、「君」とは記者を指していたのだが、本音では、一般の職員と専門職のトレーナーの見分けもつかない球団幹部に向けられているのは間違いない。王監督自身から球団批判を表面化させる気はないが、「球団には球団の考えがあるんでしょう。何も考えてない? そういう風に書いてくれよ」と、批判記事が出ることはむしろ歓迎しているようだった。

 こうした王監督の行動に力を得て、選手も堂々と球団に反旗を翻した。

 「昔の小さなケガでも覚えていてくれて、こっちが黙っていてもケアしてくれる人じゃないと」というのがその理由。そもそも、「球団トレーナー」という制度自体が、こうした理由の下に成立しているもののはず。経費削減というのは、球界の常識を通していては実現しないのだろうか。

 選手会長の小久保が「どういうことなのか説明してもらう」と球団に不信感をあらわにすれば、城島と吉田修は退団したトレーナーと個人契約を結ぶことにした。キャンプからは選手宿舎などで新旧トレーナーが一緒になって仕事をする異常事態となる。

 もっとも、経費削減が第一のフロントのことだ。選手が自腹でトレーナーを雇ってくれるなら、来季からは1人も必要ないと考えるかもしれない。

[夕刊フジ2002年1月31日]