12球団監督一同が、新ストライクゾーン克服の“特別コーチ”に長嶋茂雄・巨人軍終身名誉監督を推挙する。21日、都内のホテルで12球団の全監督が一堂に会しての監督会議が開かれた。プロ野球界初の試みとなった同会議。キャンプインを前に野球人気をアピールする一大イベントだ。
そして、究極のお祭り男が担ぎ出された。「寺原を見てもらおうと思っていたけど、代わりに大根切りを見せてもらいたいね」とダイエー・王監督。高めに約20センチ広がる新ゾーン克服に、大根切りの達人、長嶋氏を特別講師に起用する考えだ。
ユニホーム組の間では、今オフ最大の話題となっている新ゾーン。日本球界最高の打者でもある王監督の出した対策は、「大根切りの復活しかない。キャンプでは顔辺りの球を打たせる。ボール3つ分は高くなると思って、極端な準備をさせるよ」というもの。長嶋氏がダイエーキャンプを訪問した際には、その現役時代の秘技(?)を直伝してもらう考えだ。
もちろん、新ゾーン対策は全監督が抱えるキャンプ最大の課題。こんないい話を「ONの間柄だから」とダイエーに独占させる手はない。阪神の星野新監督も「ミスターに『阪神には強くなってもらわないと困る』といわれて口説かれたんや。その責任がある」と独特の言い回しで、安芸キャンプでの特別講師就任を“脅迫”している。
確かに、ヤクルト・若松監督のように「ユニホームを脱いだとはいえ、巨人の人でしょ? それは無理なんじゃないの。アドバイスは受けられないよね、普通」と、常識論をもって実現に難色を示す監督も多い。
しかし、日本球界における“超法規的存在”の長嶋氏に、常識の枠組みは不用だ。若松監督も「でもね、『どうも−』とか言ってグラウンドに入ってこられたら、無条件でお願いしちゃいますよ」と、本音では長嶋氏の訪問が楽しみで仕方がないのだ。
長嶋氏も、球春到来に血が騒いできた様子。「われわれの世代は高めを打つ技術にうるさかったんです。今度のストライクゾーンは、バットを縦振りしなきゃ打てませんよ。縦切りです、縦切り」と、今すぐにでもバットを持って熱血指導を始めそうな勢いだ。相も変らぬ長嶋頼みと、批判するのは簡単だが、やはり長嶋氏の存在感は別格のようだ。
[夕刊フジ2002年1月21日]