外様の清原和博(34)が、巨人軍の主砲として正式に認知されるのは、来季の成績次第だ。日本のプロ野球史上に輝く、不滅のV9巨人を、長嶋茂雄・終身名誉監督とともに築いた、世界の王ことダイエー・王貞治監督がこう明言する。
今、球界の話題は星野阪神が独占だ。巨人が一矢を報いたのは、来オフにFAでのメジャー入りかと注目されている、松井のクリスマス更改だけだった。
FA権利を行使もせず、「3年契約、プラス1年のオプション付き」という条件で早々と、巨人残留を決めてしまった清原など、最近は話題にもならない。巨人関係者がこう楽屋裏を明かす。
「男・星野仙一という弱虎の救世主が現れ、清原の移籍に期待していた阪神ファンも、今では熱が冷めている。巨人ファンだって、来季限りで松井がメジャーに行ってしまうかもしれない−となったら、松井に熱い声援を送るだろう。今季、異様に清原人気が盛り上がったのは、巨人との契約切れでシリに火が付いた清原の踏ん張りだけではない。FAで巨人から出ていってしまうのでは−という巨人ファンの切実な気持ちがあったからだろう」
トータル4年契約となれば、ファンの見る目も冷静になる。来季、そんな正念場に立たされる清原に対し、栄光の巨人軍を築いた世界の王ことダイエー・王監督が核心発言をする。
「力がある選手は巨人がいい。巨人には、お金だけでないものがあるからね。ただ、働かなければ厳しいよ。とくに外様にとってはね」
すべては成績次第の巨人軍という、特別なプレッシャー。とくに外様に対する風当たりは想像を絶する。渡辺オーナーの豹変(ひょうへん)ぶりで、清原も身をもって体験しただろう。
「チームの邪魔さえしなければいい」「(故障で戦線離脱して)勝利の要因が増えた」のお荷物発言から一転して、「あれだけの人気がある清原君には何が何でも残留してもらわないと困る」と、救世主扱い発言まであったからだ。
成績次第で、神様から戦犯扱いまで、まさに天国と地獄を行ったり来たりする巨人軍ならではの重圧は、この5年間で清原も実感しているだろう。
が、「問題は、清原が来年も今年のような気持ちでやれるかどうかだ」と、王監督は来季勝負を明言する。
4年契約という長期契約をした清原が、また同じことの繰り返しを演じないかという不安があるからだ。5年契約で正味働いたのは、今季と昨シーズンの後半だけ。実質1年半だけで、それまでの3年半は優雅な“有給休暇”のようなもの。
それだけに、4年契約のスタートになる来季にも、今季のような成績を残して初めて、巨人の主砲・清原が認知されるというわけだ。
「タイトルはもういらん。優勝すればええ」と、清原本人は宣言している。今季、長嶋監督から送りバントを命じられ、大荒れしたことを反省。フォア・ザ・チームに徹する覚悟ならいい。
が、今季、土壇場でプロ入り以来初のタイトルになるはずだった打点王を逃し、しょせん「無冠の帝王」とあきらめてしまったのなら、危険な兆候になる。
いずれにしろ、王監督が明言するように、清原にとって、来季が総決算の年になる。
[夕刊フジ2001年12月26日]