松井50億円仰天オファーに王が激怒


 来年FA資格を取得する松井に対して、究極のメジャー流出歯止め策。巨人が「5年契約、総額50億円」の仰天オファーをするという情報が、読売グループのスポーツ紙の1面に載った。が、こんな超破格の引き留め条件に警鐘を鳴らすのが、ダイエー・王監督だ。

 「スクープ」と銘打って報道された巨人の松井引き留め条件。年俸6億円にプラス出来高払い4億円。計10億円で、5年で総額50億円ということになる。

 巨人とすれば、25日の契約更改交渉前に、当然何度か事前交渉、松井の了承を得て、ハッピーエンドにしたいところだろう。

 が、こんな巨人流のなりふり構わぬ引き留め策に、誰よりも批判的なのが、現役時代に世界の王と呼ばれた、ダイエー・王監督だ。

 「人間、誰だって楽をしたい。だから、4年、5年といった長期契約をすれば、働かなくなるのは、人情として当然だろう」と、長期契約そのものに疑問を呈する。

 「1年、1年の勝負だからこそ、死に物狂いで真剣にプレーするんだ」と、改めて強調する。

 松井が昨年の契約更改交渉で、巨人が提示した「8年契約、年俸5億円プラス出来高2億円」という超破格の条件を一蹴。

 「やはり1年、1年が勝負ですから」と主張したが、王監督は「プロとして、あるべき姿だ」と、松井を全面支持している。

 今回も松井に決定権があり、球団側の提示をけってしまえばそれまでだが、王監督が問題視するのは、何でもお金で解決しようとする、巨人流のやり方だ。

 「われわれがいたころの『巨人は球界の盟主たれ』というプライドが今はなくなってしまった。なぜなら、大物FA選手にとんでもない条件を出し、オーナー、監督が頭を下げて入団してもらうからだ。オーナーや監督が三顧の礼で迎えた選手をコーチたちが叱れるわけがないだろう。チームの中にケジメがなくなってしまう」

 “FA公害”が、古巣・巨人を堕落させたと断言する王監督にとって、今回の松井への仰天オファーも苦々しい限りだろう。

 せっかく松井が「1年、1年が勝負」という正論を吐き、ON以来のスーパースターの正道を歩もうとしているのに、メジャーへの流出を恐れての、終身保険だからだ。

 「オレたちがいたから今の巨人があると思っているが、同時に巨人があったからこそ今のオレたちがある」と、王監督、長嶋巨人軍終身名誉監督が今でも口をそろえる。が、今はそんなプライドも持てない古巣に、王監督は失望をあらわにするのだ。

[夕刊フジ2001年12月19日]