あのサッチーとは対極…王夫人の人柄


 脱税容疑で逮捕され、拘留中の野村克也・前阪神監督の沙知代夫人(69)。一方、57歳の若さで胃がんのために亡くなり、誰からも惜しまれているダイエー・王貞治監督の恭子夫人。師走の球界に起きた悲劇は、プロ野球界のスーパースターの妻の対極というべきか。

 ダイエー・王監督の恭子夫人の通夜が、13日午後6時から、告別式は14日午後1時30分から、東京・目黒区碑文谷の円融寺で営まれる。

 「どちらかというと、2、3歩後ろに下がって、王監督を立てる控えめな印象が残っています」と、巨人軍・長嶋茂雄終身名誉監督が、しんみりと語るように、恭子夫人が表面に出てくることはまずなかった。

 ハンク・アーロンの持つ通算最多本塁打メジャー記録を破った、世界の王狂騒曲の時にも、母・登美さん、父・仕福さんが、マスコミに登場しただけだった。

 「亭主関白の王さんに甘えるかわいい奥さん」というのが、王監督が現役時代の恭子夫人評だ。

 同じくマスコミに出てこない、巨人軍・長嶋終身名誉監督の亜希子夫人とは対照的な存在だった。

 「長嶋さんは亭主関白のようなことを言っているが、大ウソ。亜希子さんは、孫悟空を手のひらでコントロールしているお釈迦さんのようなもの」というのが、巨人関係者の一致した声だからだ。

 かわいい奥さんだった恭子夫人も、王監督が現役引退、巨人監督になってからは、しっかり手綱を引くようになった。

 ハンドルを握ると、性格が一変するスピード狂の王監督を自宅から送り出すときは、「行ってらっしゃい。気をつけてくださいよ。スピードを出し過ぎないようにね」と、必ず念を押していたものだ。

 王監督が、単身赴任でダイエー監督に就任してからも、時折、福岡へやってきた。

 試合後、一塁側の選手サロンでコーヒーを飲みながら記者会見する王監督を少し離れた所で見守り、その後、帰り支度をする王監督を待って2人で仲良く帰っていく姿が見られた。

 「単身赴任で羽を伸ばし、中洲の街を遊び歩いているのでは−と、奥さんが抜き打ち視察にきたのでしょう」と、周囲が冷やかすと、「何言っているんだよ。オレは後ろ暗いことはないんだから」とムキになって否定。

 「女房は、子供たちが独り立ちしたので、東京にいてもヒマなんだ。だからたまに福岡へブラッと来るんだよ。でも、いる間はずっと一緒だから、動きが取れないんだ。困っているよ」と、テレながらもうれしそうだった。

 単身赴任だからこその、楽しい福岡デートみたいなものだったのだろう。

 「よく頑張った。57歳の若さだから、もっと長生きしてほしかった。だけど、病気には勝てなかった」という王監督の言葉には、球界関係者、ファンも全く同じ思いだ。

 同じ監督夫人でいながら、脱税容疑で逮捕され、亭主を監督の座から追放することになった野村前阪神監督の沙知代夫人とは、大違いだ。プロ野球界のスターの妻がどうあるべきか。師走の出来事が、改めて教えている。

[夕刊フジ2001年12月13日]