名古屋を捨てた星野に王がエール


 ダイエー・王貞治監督も「阪神・星野」を強力にプッシュ。古巣を捨て新天地で成功した先人として、星野氏の挑戦を支援する。星野前中日監督が阪神の次期監督に要請されている件には、「それは決まってから話すことにしましょう」としてきた王監督。だが10日、静岡県で開かれた「名球会」のチャリティーゴルフの後、自らの体験からエールをおくった。

 王監督は1988年に退団するまで選手、助監督、監督と巨人一筋。他球団(ダイエー)のユニホームを着る際には、周囲から反対する声もあった。星野氏も、阪神からの要請受諾の“最大の懸案”にしているのが、中日一筋できた星野氏に対する地元名古屋のファンの声だ。

 王監督は「オレの場合はジャイアンツを辞めてから6年間あったから、反対といってもそんな自分の考えを左右されるような声はなかった。今回の星野はちょっと大変だと思う」と星野氏を気遣いながら、野球人気再興のため、阪神監督就任を期待している。

 そして、くしくも“移籍”する球団の実力や内情も似ている。4年連続最下位の阪神を預けられる星野氏。王監督がダイエーから三顧の礼で迎えられたときも、チームは万年Bクラス。優勝させるまで5年を要した。しかもこの間、球団は脱税事件にスパイ騒動と、毎年、内輪モメを繰り返した。現場だけでなく、フロントの乱れようも阪神と酷似しているのだ。

 ダイエーで文字通り泥にまみれた王監督。その分、現在の常勝球団へ建て直した喜びも大きかった。名古屋の顔という終身保証を捨て、ダメ虎を引き受けようという星野氏には、巨人に決別した際の自分がだぶる。同じ喜びを味わってもらいたいと、応援せずにはいられない。

 もちろん現段階では、「それこそ先の話なのだから何とも言いようがない」と、協力の内容を具体的に上げるまでには至らない。しかし「リーグも違うしね」と、正式受諾以降は何らかの展開があるはず。オープン戦などで両雄が顔を合わせたときには、即席商談でトレードの成立もあるかもしれない。

[夕刊フジ2001年12月11日]