ドラフト1位の寺原隼人(日南学園)の入団が決まった、ダイエー・王貞治監督が、争奪戦に敗れた巨人・原辰徳監督へ熱烈アドバイスを送った。「絶対に清原を特別扱いするな」と、巨人軍監督として成功する秘けつを伝授したのだ。
「即戦力だと思っている。使いながら育てる方法もある。が、今後のことに関して、寺原本人、監督(日南学園・小川監督)と、1度ジックリ話し合う必要があるだろう」と、王監督は寺原育成方法に関して三者面談プランを明かす。
同時に、「6月までは寺原の気持ちは完全にウチだったんだ。それを巨人がまたいろいろと−」と、激しい争奪戦の一端を口にした。
原巨人が、ドラフト直前に猛烈な囲い込みを画策したため、一発回答とならず、寺原のダイエー入団決定に時間がかかってしまったからだ。
それだけに、仁義なき寺原争奪戦のシコリが残ってもおかしくない。しかも、巨人時代の王監督と主砲・原との関係も決して良好とはいえなかった。が、そんなこだわりは今は全くない。
長嶋茂雄・巨人軍終身名誉監督とともに、球史に残る不滅のV9という偉業を達成。巨人軍の黄金時代を築いたOBとして古巣への思いは並々ならぬものがある。
「いつまでもON時代ではない。巨人の監督も若返らないといけない」と、若返りを唱えていた王監督は、43歳の原監督にエールを送るのだ。
25日に札幌ドームで行われた、『NPB・OBオールスター戦』の試合前には、2人きりで密談までしている。
報道陣立ち入り禁止ゾーンの一塁側セ・リーグ選手サロンで、王監督と原監督が熱心に話し込む姿が、セOBたちに目撃されているのだ。
「原との話し合い? 特にそんなことしていないよ」と否定した王監督だが、原監督へ熱いアドバイスが口をついて出る。
「こうやると方針を決めたら、絶対に信念を曲げないことだ。他のチームでも同じだが、巨人の場合はとくに外部からいろいろ雑音が入る。そんなことを気にしていたら何もできない」
原カラーを打ち出したら、外野席が何を言っても耳を貸さずに、それを貫けというのだ。
「チーム愛」などという、“若大将”と呼ばれた原監督でなければ、気恥ずかしくて口にできないキャッチフレーズでもいい。有言実行が肝心だというのだ。
万年Bクラスのダイエー監督に就任して、厳しい王カラーがチームに浸透するのに、5年もかかり、悪戦苦闘した王監督ならではの苦い体験もある。
そして、周囲のだれもが心配する、清原に対するハンドリングに関してもズバリ直言する。
「絶対に清原を特別待遇しないことだ。そんなことをしたら、他の選手はシラけてしまい、監督の言うことを聞かなくなるのは当然だろう。監督と一選手という立場をわきまえ、きっちりマネジメントすれば、問題は起きない」
ダイエーの監督として、堤オーナーから特別扱いされ、浮いた存在になってしまった西武時代の清原を見てきているので、二の舞いだけは避けてほしいという実感がこもっている。
弱小ダイエーを常勝チームに変ぼうさせつつある王監督の直言をどう聞き、実行するか。原監督の成否がかかっている。
(夕刊フジ編集委員・江尻良文)
[夕刊フジ2001年11月27日]