【台北7日】台湾当局の招待で野球W杯を視察したダイエー・王貞治監督。入れ替わりで前巨人監督の長嶋茂雄氏も訪問するが、台湾の英雄といえば王監督だけ。役得を利用し、寺原の世界デビューを見届けた。5球団によるくじ引きを前に、「ますます欲しくなった。責任重大だね」と王監督。まだ1度も“当たりくじ”を引いたことのない王監督に秘策は?
この日夕方の航空機で帰国した王監督。寺原に出番が来るまで滞在できるか微妙だったが、「来年いっしょにやるんだから、見ておかなきゃ」という執念(?)が実った。初めての“ナマ寺原”を体験し、「見られてよかった。キビキビしているし、モーションにも迫力があった。これは本物だよ」と感激しきり。
そして、「なるべく無競争にしたいんだけどね。どこかドラフト戦術が変わった、という情報はないかね」と思わず本音が。現在のところダイエーのほか巨人、横浜、中日、日本ハムがくじに臨む予定だ。
寺原は高野連の“言論封殺”により、志望球団に関して自分の意見を述べることが禁じられている。日本ハムだけは嫌なようだが、「ダイエーでなければイヤ」といった後押し発言は期待できない。このままでは確率5分の1のくじに挑むことになる。
ところが、王監督のクジ運の弱さは有名。巨人時代を含め3度クジを引いて、すべて失敗している。84年の明大・竹田光訓(大洋、中日と争い大洋)、86年の亜大・阿波野秀幸(近鉄、大洋と争い近鉄)、98年の沖縄水産高・新垣渚(オリックス)。今回も過去3度と同じ投手を争ってのクジ引き。それも未体験の5倍の競争率だ。
そこでゲン直しと現状打破を兼ね、利き腕の左でクジを引くのを止め、右腕で引く考えだ。「ますます責任が重くなってきたよ」と、くじを引くモーションも右腕。大事な利き腕もドラフトに関しては“不幸の左腕”でしかない。ドラフト初登板の右腕に寺原獲りをたくす。
第1試合の日本−フィリピン戦が終わると同時に、空港に向かうリムジンに飛び乗った王監督。「ますます欲しくなった。だれもがスゴイ、と思うことを自然にやれる。姿を見せるだけでグラウンドがどよめく、というのは他に代えられない魅力だよ」と、最後の最後まで寺原賛歌が止まらなかった。
「1番いいのは他が全部止めてくれることなんだよね」と、かなわぬ願いをかける王監督。前出の5球団でくじ引きとなった場合、王監督の順番は4番目。抽せん箱には2通のくじが残っていることになる。引く腕で悩み、本番ではどっちを引くかで悩みそう。先月盲腸手術を受けたばかりの身には、神経を使う場面の連続になりそうだ。
[夕刊フジ2001年11月08日]