王、寺原争奪戦で原巨人を一蹴


 ダイエー・王貞治監督(61)が、原巨人の“寺原囲い込み”を一笑に付し、最終的に三つどもえ戦を宣言した。

 4日夜、東京ドームで行われた『プロ野球出身地別東西対抗』の東軍監督を務めた王監督。19日に都内ホテルで開催される、注目のドラフト会議の超目玉の日南学園・寺原隼人争奪戦に関し、ズバリこう言い切ったのだ。

 「巨人だけでなく、ウチと中日が当たりクジを引いたら、当然入るよ」と、巨人、ダイエー、中日の3球団なら入団OKと断言した。

 ここへ来て風雲急を告げる状況の寺原争奪戦。巨人・原辰徳監督が、異例の2度の寺原もうで。狙いは囲い込みという見方がもっぱらだ。

 日南学園・小川監督が、東海大出身で原監督の先輩という学閥関係もある。

 巨人が当たりクジを外したら、社会人行き→3年後の巨人入りという密約説だが、王監督は一蹴した。

 「本当に巨人はそんなことを言ったのかい? そもそも寺原に関しては地元のウチが先行していたんだからね。オレが寺原と会った感触からいえば、何の問題もないよ」と、言い放つ。

 確かに、クジを外したら社会人入りという密約は、地元のダイエーが仕掛け人という説が最初に流れていた。巨人の逆襲情報にも動揺を見せない。

 巨人・原監督の泥縄式の寺原もうででは、逆に王監督の自信を深めさせただけだったようだ。

 「あれはおかしいよ。タンパリングだよ。『3年待って』なんてどうみてもおかしい」

 「ルール違反。ウチだけじゃなく指名あいさつに訪れた球団に失礼」

 横浜・森祇晶監督、中日・山田久志監督が、口々に原監督を糾弾。巨人の動きに神経をとがらせているのと全く対照的だ。

 王監督の「寺原、巨人一本絞り全面否定。3球団ならOK」発言は、中日・山田監督にとっては朗報だろう。が、名前がなかった横浜・森監督には、原監督の動き以上にショッキングな王宣告になるかもしれない。

 巨人の囲い込み作戦は「眼中になし」の王監督。ただし、6日からワールド・カップが行われる台湾では、シリーズで実現しなかったON対決が待っている。

 台湾の英雄。しかも来年、ダイエーvsオリックスの公式戦が予定されているだけに、王監督が招待されるのは当然だが、巨人軍・長嶋茂雄終身名誉監督も台湾側から招かれている。

 巨人の寺原獲りは、そもそも長嶋監督の大号令が発端だ。原新監督以上に寺原にご執心の長嶋茂雄終身名誉監督とのご対面、日本代表として目の前にいる寺原を巡る綱引きが注目される。が、王監督の余裕からすれば、肩透かしに終わりそう。

 「盲腸の方はもうよくなったよ。まだゴルフはやってないけどね」と、体調の方も全快宣言。11・19ドラフトで寺原クジを引くだけと、意欲満々だ。さて、王監督の思惑通りになるか。

 それとも、巨人、中日というライバル球団に当たりクジを引かれてしまうのか。はたまた横浜、指名強行する日本ハムが引き当て、寺原が社会人行きという大波乱が起きるのか。興味津々の11・19ドラフトが刻々と近づく。(夕刊フジ編集委員・江尻良文)



[夕刊フジ2001年11月05日]