一部で流れた辞任報道で去就問題に火が付いたダイエー・王貞治監督(61)が、夕刊フジに初めて胸中を明かした。来季1年間の限定で続投、来オフに勇退することを告白したのだ。(夕刊フジ編集委員・江尻良文)
辞任騒動が起きた王監督は、「去就は本拠地最終戦(30日の近鉄戦)でファンに明らかにする」と報道陣に語っただけで、続投か、辞任か、去就の結論を口にしなかった。王監督らしく筋を通したからだ。
来年、台湾で公式戦を予定しているために、台湾の英雄・王監督の続投は必要不可欠−。コトを焦ったフロント首脳が8月初旬に来季続投要請しようとしたときに激怒、一蹴している。
「シーズン中に来年の話をするのはおかしい。優勝する、しないでコーチ、選手たちの去就が変わってくるのに、監督だけ早々と来季続投などというのはおかしい」
王監督の怒りに驚いたフロント首脳は、続投要請をシーズン終了まで先送りするしかなくなった経緯がある。
王監督が決意した来季1年間の限定続投には、さまざまな意味合いがある。
「3連覇が一番むずかしいんだよ。3連覇できれば、4連覇も5連覇もできる」と、事あるごとに言っていた王監督の言葉通り、3連覇の壁が立ちはだかった。
「3連覇をすれば、一応、一つのことを成し遂げたという達成感はあるだろう」とももらし、3連覇→勇退という考えもチラつかせていたが、もう一歩の所で失敗したことから白紙撤回。
改めてダイエーを常勝軍団として完成させたいという思いが強くなっているだろう。来季、V奪回、その上で勇退する。
「もうオレも還暦を過ぎたんだよ。いつまでもONの時代ではない。球界も若い監督を育てていかなければいけない」という、世代交代の意味もある。
生臭い話をすれば、商売しか頭にない素人フロント首脳との付き合いに嫌気がさしているのも事実だ。
それでも、「今、王監督がいなくなったら、福岡は大変なことになってしまう」という、王監督を支持してくれている地元財界、ファンの声を聞けば、無下にはできない。
「投げ出せば、お世話になったファンを裏切ることになる」という言葉に王監督の思いが込められている。
1年限定続投は、同時に、フロント首脳への厳しい最後通告でもある。「今、辞めたら困るだろうから。来年のオフには次の人を準備しているでしょう」と言うのは、王監督にオンブにダッコできた球団への決別宣言に他ならない。
◇王監督との一問一答
−中日・星野監督が電撃的に辞任したが、王監督も辞任を決意しているのか?
王監督 「2年連続勝てなかったことで辞任したのは、いかにも星野らしい決断だね。でも、オレは辞めないよ。博多のファンに長い間、お世話になってきているのに、投げ出すことはできない」
−来季、続投するということでファンは安心するだろう。
王監督 「今、オレが辞めたら、次にやる人を用意していない球団も困るだろう。無責任に投げ出すことはできないよ」
−ということは、長期にやる気持ちはないということか?
「来年でもう8年になる。あまり長くやることはいいことではない。来年のオフには球団側も次の人の準備はするだろう」
[夕刊フジ2001年09月27日]