日本の球界、やっぱりON頼み


 リーグ連覇へミラクル・アゲインを唱え続ける巨人・長嶋監督。近鉄、西武と激しい三つどもえを展開、リーグ3連覇を目指しているダイエー・王監督。ONコンビの不滅の人気にコミッショナー関係者が改めて仰天する。

 11月25日の日曜日に札幌ドームで行われる『NPB・OBオールスター戦』が爆発的な人気を呼んでいるのだ。

 「札幌で切符が売れに売れている。コミッショナー事務局へも問い合わせが多くきている」と、主催のコミッショナー事務局サイドが驚く反響ぶりだ。

 “プラチナペーパー”になった、7月24日に札幌ドームで行われたオールスターの時と全く同じような異常人気。

 札幌側が「こんな人気があるのだから、1試合ではもったいない。2試合でも3試合でもやりましょうよ」と、コミッショナー事務局に言い出しているほどだという。

 過去のスーパースターが一堂に会する『OBオールスター戦』だが、最大の目玉はONコンビ復活だ。

 「やはり長嶋、王人気はすごい」と、コミッショナー事務局サイドでは不滅のON人気に舌を巻く。

 同じようにOBを集めてリーグ戦をやる『マスターズ・リーグ』が、元プロ野球選手のプロゴルファー、ジャンボ尾崎、球界永久追放になった元西鉄の池永正明氏まで起用。話題作りに躍起になっているのと対照的。ONの存在の有無の落差は計り知れない。

 「札幌では巨人戦しかテレビ放送をやらないので、巨人ファンが多いんだ。巨人戦ならいつも超満員になるよ」と地元民が言う、札幌ならではの事情があるにせよ、『NPB・OBオールスター戦』の爆発的ON人気は快挙だ。

 巨人が首位・ヤクルトを3タテした9日の試合が21.4%と、今季ベスト3位になるテレビ視聴率を記録したのに続き、プロ野球界にとって朗報だ。

 それにしても、偉大なONの不滅の人気。王ダイエーの方は近鉄、西武と最後の最後まで激烈な三つどもえ戦を展開するだろうが、3連覇の可能性は十分ある。

 こうなると、長嶋監督が叫ぶミラクル・アゲインの実現を球界首脳も祈りたくなる思いだろう。

 「巨人が残り試合を2勝1敗ペースでいくと、ヤクルトは5割ラインが必要になる。5割というと、楽なように思えるが、巨人が先に終わったあとに、5割ペースは厳しいものがあるよ」と、評論家諸氏の間からも長嶋巨人の奇跡Vの可能性の声が出始めているだけに、なおさらだ。
 
 ただし、長嶋監督は『ミラクル・アゲイン』という呼び名を早く変えた方がいい。実現したのは、長嶋監督が命名、流行語大賞にもなった『メーク・ドラマ』であり、渡辺オーナーが言い出した『メーク・ミラクル』は失敗しているからだ。

 実現しなかったミラクルをアゲインすること自体、無理がある。『メーク・ドラマ・アゲイン』としなければ、奇跡は起きない。その上で、ひたすら奇跡の再現を願う。

 「ヤクルト−近鉄の日本シリーズでは、清原のFA問題などの巨人のストーブリーグに吹き飛ばされてしまう。ヤクルト−西武ではこれまた関東ローカルになる。最低限、球場のキャパが大きく、観客動員力のあるダイエーが出てくれないと困る。もちろん、ベストは昨年のONシリーズの再現だが−」

 こんな本音は、日本シリーズを主催するコミッショナーサイドだけではない。テレビ局はじめ、マスコミも同じだ。ファンの多くも奇跡のONシリーズ再現を願っているだろう。(夕刊フジ編集委員・江尻良文)

[夕刊フジ2001年09月13日]