西武との福岡ドーム決戦に勝ち越し、首位確保。リーグ3連覇へ自信を深めたダイエー・王監督が、“新世紀の怪物”、日南学園・寺原隼人を絶賛。長嶋巨人のミラクル・アゲインが怪しくなり、ONシリーズの再戦はむずかしくなったが、寺原獲りでは激突の様相だ。(夕刊フジ編集委員・江尻良文)
最大のライバル西武との福岡ドーム3連戦の第2ラウンド、松中の劇的な逆転サヨナラ2ランで地獄から天国でV3モード突入。王監督はリーグ3連覇を確信して、第3ラウンドの松坂など眼中になかった。
「きのうの試合に負けていたら4連敗。このままズルズルいく恐れがあった。本当に大きな試合だったよ。今度の西武ドームでの3連戦を2勝1敗と勝ち越すことだな」
ターニングポイントになった試合を制した王監督は、第3ラウンド開始前から松坂を無視して、9月14日からの西武3連戦をニラんでいた。
いや、それどころか、3連覇の先まで視野に入れ出している。甲子園を熱狂させ、11・19ドラフトの超目玉になっている日南学園・寺原について触れたのだ。
「テレビで見たけど、寺原のすごいところは、ただ150キロを超す速いボールを投げることじゃない。140キロ台も、130キロ台の速球も投げ分けられることにある。1試合投げるためのスタミナ配分とかを考えているんだろう。だから、甲子園では打たれた面はあるが、ああいうことはセンスがなければできない。松坂に共通する面がある。プロはただ速いボールを投げるだけでは通用しない。いろいろ状況を考え、緩急をつけたピッチングをしないとね」
甲子園で打たれたことで、逆に怪物の真価を感じ取ったというのだ。最終的には5、6球団の競合となるといわれる寺原に対する王監督の絶賛は、聞き流せない。
寺原は、一部スポーツ紙に「優勝できるチーム、ユニホームが格好いい球団」として、ヤクルトと並んでダイエーの名前をあげているからだ。
「退部届を出すまでは特定球団の名前を出さないように」という高野連の通達があり、注意処分されたが、好きな球団としてダイエーの名前があることは間違いないだろう。
「本当にウチの名前をあげたの?」と、王監督は言いながらまんざらでもない様子での寺原賛辞だけに、他球団は気が気ではなくなる。
寺原の口からダイエーの名前が出る前から、スカウト間では「寺原争奪戦はダイエーが先行している」という情報も流れているからだ。
九州地区の大物選手獲得を最優先に進めているダイエーが実力、人気を兼備した宮崎の日南学園・寺原を見逃すわけにはいかない。
他球団がダイエーに神経をとがらせるのは当然だが、とくに巨人・長嶋監督は王監督の動向が気掛かりになるだろう。
「松坂以来の大投手。入念にチェックしていますよ」と、寺原にほれ込んでいるからだ。
王監督、長嶋監督とも球団側の続投要請に対し、「まだ大事なシーズン中だから」と、態度を明らかにせず、去就が注目されているが、もし、シーズン終了後に続投を決めれば、激突必至。11・19ドラフトで寺原クジを巡り、ON対決というシーンが現実的なものになってくる。
「20世紀の最後をON決戦で飾ったのだから、21世紀のスタートもONシリーズで飾ってほしい」というファンの願いは夢に終わりそうな情勢だが、“新世紀の怪物”寺原を巡る番外ONバトルとなれば、球界は沸き返る。(夕刊フジ)