長嶋、勇退騒動再燃?続投条件とは


 「長嶋終身監督だよ」「なぜヤクルトがペタで、巨人がアルモンテなのか。それはだれかがバカなんだ」−巨人・渡辺オーナーの一連の発言の裏にあるのは何か。長嶋監督の進退伺封じの狙いが見え隠れする。

 長嶋監督の続投問題は、球団側に主導権はない。長嶋監督自身に決定権があるからだ。長嶋監督が「来季もやります」と、明言しない限り一件落着しない。

 「去就を決めるのは監督自身。オーナーが続投を口にしても、監督が辞めるといえばそれまでだから」と、現場サイドでも、長嶋監督の今後の出方をかたずをのんで見守っている。

 それも当然だろう。4年ぶりのリーグ優勝、6年ぶりの日本一になった昨年でさえ、リーグ制覇後も「去就問題は白紙」ともらし、「日本一になったので、勇退してしまうのでは」と側近が戦々恐々としたのだ。

 常に引き際を念頭に入れている長嶋監督だけに、リーグ連覇に失敗すれば、ケジメをつける意味で進退伺を出す可能性は十分ある。そうなれば、3年前の空前絶後の勇退騒動が再燃する。

 渡辺オーナーの立場としたら、そんな最悪のケースだけは回避したい。

 「長嶋終身監督だよ。過去の功績を考えてくれ。巨人だけでなく、日本のプロ野球にもたらした功績を考えてくれ」と、長嶋終身監督をぶち上げたのも、進退伺封じの狙いが見え隠れする。

 「終身監督」のお墨付きを持ちだし先手。長嶋監督に対し、V逸の責任をいっさい問わず、進退伺必要なしというアピールだ。

 同時にフロント首脳をこう一刀両断したのも興味津々だ。

 「ヤクルトはペタジーニを獲り、古田を育てた。なぜヤクルトがペタで、巨人がアルモンテなのか。それはだれかがバカなんだ」

 V逸しても責任はフロント首脳にあると明言したのだ。「あんなアルモンテを獲得するためにフロリダ・マーリンズに1億円ものトレードマネーを払って米球界だけでなく、日本の他球団からも笑われている。アルモンテを高く売り付けたフロントは出世したらしいよ」と、球界OBがあきれた内幕を明かすほど。

 フロント首脳が渡辺オーナーの怒りのターゲットにされるは当たり前で、シーズン終了後に粛清人事が断行されることになるだろう。

 フロント大改造は、長嶋監督の続投問題にも大きく影響してくる。アルモンテ獲得に止まらず、何かと非協力的なフロント首脳に怒り心頭で、フロント刷新が続投の最低条件になっているからだ。

 渡辺オーナーのフロントへの“バカ”発言に関して、長嶋監督は「オーナーがそんなことを言ったの? 負けた日は新聞を読まないから知らなかったよ」と、寝耳に水を強調した。が、フロント首脳刷新人事が断行されるなら、続投に前向きになるのは間違いないだろう。

 「ウチのフロントは無能だ」と怒りを露にしている長嶋監督だが、「フロントの実態はオーナーもわかっている」と、周囲にもらしている。その通りのオーナー発言だったわけで、わが意を得たりの思いだろう。

 渡辺オーナーから続投を要請されるトップ会談の席上、「フロント刷新」が確約されれば、来季も指揮を取ることを受け入れることになる。


[夕刊フジ2001年08月16日]