いよいよ首位・ヤクルトとの運命をかけた直接対決3連戦が10日からスタートする巨人。同時に長嶋監督の去就Xデーが注目されることになる。
この3連戦に3連勝して初めて、「ミラクル・アゲイン」が現実的なものになってくる。そうでなければ、ご臨終だ。
が、グラウンド外では一足先にすでにストーブ体制に突入している。スポーツ各紙の巨人担当記者が、渡辺オーナーの徹底マークを始めたのだ。
渡辺オーナー、日本テレビ・氏家CEOらで構成されている、『巨人軍最高経営会議』が、監督の人事権を持っているが、実際は渡辺オーナーの意向ですべてが決まる。一言でも監督人事に言及すれば、重大な意味を持つ。それだけに、渡辺オーナーから片時も目を離せない。そこで、ベタマークする“パパラッチ”が結成されたのだ。
異例の真夏の8月ストーブリーグ体制の裏には、渡辺オーナーが即断即決するのでは−という観測があるからだ。
ヤクルト3連戦でご臨終となれば、一気に長嶋監督の去就問題をはじめとするストーブリーグに火がつくことは避けられない。渡辺オーナーは、長嶋監督の去就に関して、「知らん」と言っただけで、その後、沈黙を保っているからだ。
このまま放置したら、収拾がつかない事態になる。渡辺オーナー自身も、3年前の「長嶋監督勇退、森新監督誕生」大騒動で、長嶋監督の進退問題の恐ろしさを思い知らされているはずだ。
来季も続投を要請するつもりなら、悪夢の大騒動ぼっ発再現を回避するためにも、早めに動くのは当然だろう。万が一、渡辺オーナーが無言を貫くようなら、「長嶋監督勇退」の可能性が高いという観測が強まり、燃え盛るストーブの火を消せなくなる。
首位・ヤクルトとの3連戦が終われば、何らかのアクションが予想される。渡辺オーナーが長嶋監督に続投を要請するXデーが秒読みに入ったといえる。ただし、続投要請で一件落着となるかどうかは、別問題だ。
就任以来、3年連続最下位の危機に直面しながら、阪神が早々と野村監督の来季続投を発表しているが、これは例外にすぎない。
何が何でも続投したい野村監督と、続投させたい久万オーナーのコンビが、世論を無視して強行突破したからだ。
長嶋監督の場合は、監督の座に執着しているわけではない。あくまでファンの支持、後押しがあっての続投でなければ、要請されても即答はしないだろう。
ましてや長嶋監督は、フロントの非協力的な姿勢には絶望しており、フロント刷新などの条件がなければ、勇退の可能性がある。
ダイエー・王監督と同じようなケースになる。ダイエー球団側は、勇退されることを恐れ、続投要請しようとしたが、「優勝争いをしているこの時期に、何を言っているんだ」と、王監督は怒り心頭。「ペナントレースが終わるまで、コーチや選手は来年のことはわからないのに、監督一人が早々と来年の身分保証をもらうのはおかしい」という筋論を強調。球団側はあわてて続投要請を凍結する事態になっている。
長嶋監督も王監督同様だ。即答することはないだろう。渡辺オーナーが続投要請するXデーは秒読みだが、長嶋監督が去就を決めるのは、熟慮してシーズン終了後になる可能性が高い。長嶋監督の進退問題は簡単にはケリがつかないだろう。
[夕刊フジ2001年08月10日]