王監督続投でダイエー専務に? 


 王監督へ続投要請のタイミングをつかみそこなって困惑している、ダイエー・フロント首脳に追い打ち…。「球団専務の肩書を付け、王監督に人事権を与えろ」という声がチーム内部から起きている。

 地元・福岡ドームに戻って、6日から始まったロッテとの3連戦。「6日に王監督へ続投要請するつもりだったのに−」と、ダイエーフロント首脳が頭を抱えている。

 東京ドームで最下位・日本ハム相手にまさかの負け越しと、タイミングは最悪。

 しかも、王監督は、5日のデーゲーム後に福岡へ戻ったナインと別行動で、6日午前に東京から福岡入り。

 「今日、福岡へ帰ってきたばかりだから、球団から何も話はないよ。孫が日本へ帰ってきていたものだから、昨日の夜は東京の自宅で過ごしたからね」

 孫を相手に日本ハムに負け越しのゲン直しをしてきたばかりの王監督へ、無神経に無粋な続投要請などしたら、どうなるかわからない。

 就任以来、3年連続最下位の危機に直面しながら、異例の8月続投が決まった阪神・野村監督とは事情がまるで違うのだ。

 何が何でも延命したかった野村監督。その野村政権を独断人事で誕生させた張本人の久万オーナーのメンツによる続投支持という、ファン無視の続投決定劇。それをだれよりも怒っているのが、王監督なのだ。

 「シーズン中で、コーチ、選手が戦っていて、来年どうなるかわからないときに、監督ひとりが来年の保証を得ようとすること自体、おかしい」という、当然すぎる筋論だ。

 近鉄、西武、さらにはオリックスまでが参入している大混戦レース。だから、「シーズンが終わるまで自らの進退はわからない」と、王監督はアピールする。球団側が、王監督に逃げられないために、早めの続投決定に持ち込もうとしていることにも不快感を隠さない。

 ノーモアー・ノムラを旗印とする王監督に対し、チーム内からも支援の声がわき起きている。

 「球団側が続投を要請してきたら、王監督はいろいろ注文をつけるべきだ。簡単に受けるべきではない」というわけだが、中でもしかるべきポスト要求をすべき−の意見が多い。

 「信じられないようなミスばかりしているフロント首脳なのだから、王監督に球団専務の肩書を与え、人事権まで与えるべきだ。そうなれば、世間から笑われるような不祥事の続出がなくなるだろう」

 こう明言する球団関係者は、球団内での王監督の存在の大きさを証言する。

 「小久保、松中、城島たちは王監督だからこそ、付いてきている。王監督が退団するようなことでもあれば、将来、FAなどでダイエーを出ていってしまうだろう」

 引き留めに躍起のフロント首脳が、「今、ウチは王ダイエーになっている。だから1年でも長く王監督にやってほしい」と口説き文句を口にしているが、王ダイエーはまぎれもない現実だというのだ。

 だからこそ、本気で続投要請するならば、王監督に「人事権のある球団専務」兼任というポストを用意しろ、というのだ。

 巨人・長嶋監督は「球団常務」の肩書がありながら、フロント首脳と抜き差しならぬ確執がある。もう一つポストが上の「球団専務」というのも、そのへんの事情が絡んでのものといえる。

 球団の利害だけから、早めに王監督の続投を決めたいと焦るフロント首脳。拙速に終わる前に、準備万端にすべくやるべきことがある。

[夕刊フジ2001年08月07日]