セ、パとも首位攻防のヤクルトvs巨人(神宮)、ダイエーvs近鉄(福岡ドーム)でスタートする後半戦。もし、このままヤクルト、近鉄が逃げ切り、シリーズ史上初の対決になったら、どうなるか。プロ野球界を揺るがす事態が起きかねない。
「ヤクルトvs近鉄の日本シリーズ? 勘弁してくださいよ」と、戦々恐々とするのはテレビ局関係者だ。
それも無理はない。今年のオールスターは、セ、パの4番の巨人・松井、近鉄・中村がそろって史上初の3試合シリーズ3戦連発を記録して最高の内容だったのに、テレビの視聴率は低迷。
第1戦=15.2、第2戦=16、第3戦=14.5%どまり。昨年の22、22、19.7%から大きく後退、ついに20%台を割ってしまったのだ。
日本テレビが前半戦に中継した巨人戦の平均視聴率が、15.9%で、昨年の19.7%から大幅にダウンしているのと、酷似している。
「オールスターの視聴率がどうなるか、注目だね」と言っていたのは、巨人・長嶋監督だが、巨人人気の下降、イコールプロ野球人気のダウンという図式になっている。
そんな不景気ムードの中で、ヤクルトvs近鉄の日本シリーズがどれだけの視聴率を取れるか。テレビ局関係者が戦々恐々とするのはわかる。
「史上初のヤクルトvs近鉄のシリーズならフレッシュで、かえって盛り上がるのではないか。21世紀になってプロ野球界にも新しい時代が到来ということで歓迎すべきだ」という球界関係者もいるが、果たして、ファンがどう反応するか。
ヤクルトvs近鉄のシリーズとなると、スター選手のメジャー流出に拍車がかかることにもなる。
ポスティング・システム(入札制度)でメジャー入りを希望しているヤクルト・石井一、近鉄・中村に「優勝してチームに恩返しをした。これで胸を張ってメジャーへ行ける」という大義名分を与えることになるからだ。
近鉄の場合、看板選手の流出だけに終わらないだろう。業務提携している、大リーグのドジャースに買収される事態にまで発展しかねない。
イチロー抜きのオリックスの惨状をみれば、中村がいなくなった近鉄がどうなるか、容易に想像がつくだろう。一方、ドジャースには近鉄買収のメリットがある。
イチローで大もうけしているマリナーズが、来年の開幕戦を日本で開催しようとするなど、メジャーの日本進出の動きは激化している。ドジャースとすれば、近鉄を足掛かりに日本市場を制覇しようとするのは、当然だろう。
ヤクルトvs近鉄のシリーズは、国内では敗れた巨人・長嶋監督、ダイエー・王監督の進退問題をはじめとする、大激震のストーブリーグを引き起こすことにもなる。
万が一、ON同時勇退ということにでもなれば、球界にとどまらず、社会的な大事件として世間を震撼(しんかん)とさせる。
さて、ヤクルト、近鉄がこのまま逃げ切れるのか。まずは最大のライバルとの直接対決になった後半戦の開幕3連戦に注目だ。
[夕刊フジ2001年07月27日]