王監督、松井の大逆転3冠王にゲキ 


  巨人・松井に対し、世界の王が、大逆転3冠王獲りへゲキを飛ばした。

 福岡ドーム、横浜スタジアムと、オールスターで2試合連続本塁打。通算7本で長嶋監督と並ぶ、歴代7位タイになった松井。札幌ドームでもホームランを放てば、史上初の「3試合シリーズ3試合連続ホーマー」という記録を達成する。

 「松井は大きな舞台、球宴には強いんですよ」と、長嶋監督も珍しく絶賛する。期待が大きな分、いつも松井には辛口なコメントが多いだけに異例。オールスターの一発を、後半戦スタートのヤクルトとの神宮決戦へつなげてほしい気持ちの表れだろう。

 が、周囲からは「結局、毎試合ホームラン1本打ったら終わり。第2戦のMVPをヤクルトのペタジーニに取られてしまうように、勝負強さがない」という批判の声が起こっている。

 巨人の4番というだけでなく、日本の球界を代表する顔としての存在感の物足りなさを指摘するのだ。

 そんな松井に世界の王ことダイエー・王監督が猛烈なゲキを飛ばす。

 「前半戦は首位打者ターンしたが、肝心なホームランが出なくて苦労したみたいだが、物は考えようだ。打率という、松井にとって一番むずかしい部門でトップにいるということは、3冠王のチャンスだということだよ」

 ホームランダービーでヤクルト・ペタジーニに9本、打点でも清原に27打点もの大差をつけられ、絶望的な状況だ。それなのに、奇跡の大逆転3冠王獲得へシリをたたくのだ。

 もっか首位打者なのだから、初の3冠王へのチャンス、という長嶋監督も真っ青なプラス思考を松井に勧める王監督。自ら昭和48年、49年に2年連続獲得している3冠王の美酒をかわいい後輩にも味わわせてやりたいというだけではない。

 松井が後半戦大爆発、奇跡の大逆転3冠王でも取らない限り、長嶋巨人の優勝はむずかしくなっている。

 「世紀末を飾ったように、世紀初めの今年の秋も何が何でもONシリーズをやりたい。ミスターへ借りを返さないと気持ちがおさまらない」という、王監督にとって、今の長嶋巨人の苦境は対岸の火事ではすまない。

 「長嶋さんは『ダイエーの打線はすごいよ。リーグ連覇の自信から、あきらめることなく、粘り強い。ウチの打線はキレてしまっている。何点取ったら勝てるんだと、味方投手にあきれ返っている』と、言ってましたよ」とダイエー関係者が口にするように、末期的状況にある。

 王ダイエーも、近鉄に首位を渡したままで後半戦に突入するわけで、表面的には似ているが、長嶋監督が認めるように、内情が大きく違う。

 リーグ3連覇に自信をみなぎらせている王監督にしたら、「せっかく優勝しても、巨人の出てこない日本シリーズでは−」という、肩透かしが一番怖い。

 後継者として認める松井にゲキを飛ばし、長嶋巨人のリーグ連覇を実現させるのが、もっとも効果的な方法だ。

 長嶋監督が、「前半戦のMVP」という清原があれだけ打っても、今の現実しかない。王監督のゲキにこたえた4番・松井のホームラン量産しか大逆転連覇の道はないのだ。

[夕刊フジ2001年07月24日]