王が虎にゲキ!清原を奪い取れ!


 巨人・渡辺オーナーが残留ラブコールを送り、改めて清原のFA問題がクローズアップされてきた。リーグ3連覇へ首位を走るダイエー・王監督が注目発言をしている。

 「清原は絶対に残ってもらわないと困る。去年の後半からがんばっているから、人気も出ている。結婚を勧めてきたが、奥さんのおかげだ」と、渡辺オーナーが残留コールを口にするのは、当然だろう。

 巨人戦のテレビ視聴率は低迷したままだが、逆に清原人気だけは上昇しているからだ。清原本人にすれば、リベンジした心境だろう。

 昨シーズン前半、「チームの邪魔をしなければいい」「(清原の故障で)勝利の要員が増えた」−などと、清原大批判を繰り返していた渡辺発言に対して、「一生忘れへん」と清原は明言したからだ。

 今回の残留ラブコールは、渡辺オーナーの全面敗北宣言であり、清原にとっては全面勝利の意味がある。

 「もう清原にはわだかまりはないはずだ。去年のオフにオーナーが個人的に清原に会って謝罪しているからね。オーナーは人情家だよ」と言うのは、長嶋監督だ。

 オーナーからの直接謝罪、そして、残留ラブコールで円満解決。巨人サイドからすれば、こう解釈したくなるのもわかる。

 ところが、イニシアチブは清原本人にあるので、簡単には一件落着しない。渡辺オーナーの残留ラブコールで、逆に阪神、横浜など清原獲得に意欲を燃やす球団の水面下での動きは激化する。これから清原争奪戦の本番だ。

 そんな折、ダイエー・王監督が阪神にゲキを飛ばす。渡辺オーナー、長嶋監督が、事あるごとに「阪神が強くならないと日本のプロ野球は盛り上がらない」と強調するのと、基本的には同じ発想だ。

 「ドラフトでもそうだが、阪神は勝負しないから、ダメなんだよ。例えば二岡だ。彼は阪神入りを希望していたのに、巨人が出てきて、契約金が跳ね上がると手を引いてしまう。阪神はあれだけ人気があって、お金を持っているんだから、巨人を上回る条件を出せばいいんだよ。そうしなければ強くならない」

 こう熱っぽくゲキを飛ばすのだ。渡辺オーナー、長嶋監督とは違った王監督ならではの思いもあるからだろう。

 甲子園のスターとして早実から巨人入りした王監督だが、一時期、本命は阪神入りで、二重契約騒ぎまで起きている。阪神のつめの甘さは身をもって経験している。

 さらに、万年Bクラスチームだったダイエーを常勝チームに育て上げた、監督としての体験的なアドバイスでもある。

 「万年Bクラスチームに染み付いた負け犬根性を一掃するのは、本当に大変だった」と、述懐するように、世界の王から常勝監督になるまでの苦労は並大抵ではなかった。

 ようやく監督就任4年目で、20年連続Bクラスだった弱小球団をAクラス入りさせ、その後は日本一、リーグ優勝、そして、今季もリーグ3連覇へ向け、首位を走っている。観客動員も巨人を追い上げる勢いだ。

 そんな王監督の阪神への猛ゲキだ。阪神球団首脳は、素直に拝聴、肝に銘じなくてはいけない。そして、さっそく巨人と張り合い、清原獲りへ全力を傾注しないと明るい未来はないだろう。


[夕刊フジ2001年06月21日]