巨人・長嶋監督にダイエー関係者から緊急アドバイスが送られた。今月下旬に復帰予定の工藤に関してのマル秘情報だ。
17日の福岡ドームでの阪神第3戦、上原が復帰登板。火の車状態の先発陣だけに、待望久しい右腕エースのカムバックになる。
もう一人、左腕エースの工藤はこの福岡シリーズでチームに合流している。「工藤も今月末には復帰できるだろう」と、長嶋監督はカウントダウンを始めた。
そんな折も折、ダイエー関係者から長嶋監督へ異例の緊急アドバイスが発進されたのだ。
「工藤が投げるときは、吉永と組ませない方がいい」という、工藤と吉永をよく知るダイエー関係者ならではの内容だった。
「実は、2人は全く手が合わない。だからバッテリーを組ませると失敗する。絶対やめた方がいい」と、強い勧告だ。
人間、だれにも相性というものがあり、どうしても肌が合わない天敵関係ができてしまう。長嶋監督にとっては、阪神・野村監督、横浜・森監督がそうだ。同様に、工藤と吉永がまさにそんな状態だというのだ。
これまで長嶋監督は、同じダイエーから移籍してきた工藤と吉永をコンビにすることが多かった。
長い間、同じカマの飯を食った同士という関係を重要視していたからだ。巨人という特別な人気球団のプレッシャーなどを1年早く身をもって体験した工藤からの生きたアドバイスの効果も、期待していた。
ところが、2人を長い間、見てきたダイエー関係者からすれば、こんなリスクの大きすぎる危険な起用法はないのだ。
小さな親切、大きなお世話かもしれないが、故障で長期リタイアしていた工藤が復帰するタイミングだからこそ、緊急アドバイスしたのだろう。
王監督と長嶋監督の特別な関係もある。ONコンビとして昭和のプロ野球界を背負ってたち、20世紀最後の昨年、ついに今度は監督同士で悲願のONシリーズを実現。球界を沸かせたが、21世紀最初の今年も、何が何でもONシリーズを再現する必要に迫られている。
長嶋第一次政権、王政権時代、現場を全力でサポートしてきた長谷川実雄・元巨人代表が亡くなったからだ。
「僕が一番、迷惑をかけた監督だから、長谷川さんのためにも今年もONシリーズを実現したい」と、王監督が言えば、長嶋監督も思いは同じだ。「本当に男気のある名代表だった」と漏らし、供養のONシリーズ再現を誓っている。
そんな背景もあっての、ダイエー関係者からの長嶋監督への裏情報発信だった。
「工藤のことならば、すべてワンちゃん(ダイエー・王監督)から聞いて知っていますよ。これまで1年おきの成績だとか、夏休みが必要だとか、さらにヒジ、肩の本当の状態まで、いろいろ教えてもらいました」−。工藤がFA移籍してきた昨年、長嶋監督はこう言って、胸を張っていたものだ。
ところが、1年遅れて入団してきた吉永との相性まではよく知らなかったようだ。ダイエー関係者からの緊急連絡に、「本当にそうなのか?」と、驚きの色を隠せなかったという。
今月末に工藤復帰した際に、長嶋監督がどう決断するかだ。それでも、互いにダイエーを出たという連帯感への期待にこだわって吉永とのコンビを続けさせるのか。それとも、レギュラーへの道を着実に歩んでいる阿部とのコンビに切り替えるのか。注目される人事だ。
[夕刊フジ2001年05月17日]