来年1月1日付でダイエー・中内功オーナーが退任、二男の中内正オーナー代行がオーナーに昇格するが、波紋は広がるばかり。身売り騒動に拍車がかかるだけでなく、王貞治監督の去就にも影響してくるからだ。今回のオーナー交代劇で、来オフにも王監督がダイエーと決別する。
78歳の中内功オーナーから41歳の中内正オーナー代行へのバトンタッチ。表面的にみれば、世代交代、若返り人事になる。
「リーグ2連覇を果たしたし、21世紀は新オーナーでということでオーナーに就任することになりました」と、中内正オーナー代行が言えば、高塚球団社長もこう強調する。
「21世紀はスーパーホークスということで、新オーナーと新しい時代を築きたい」
ところが、カリスマ性のあった大物オーナーの退任はそんなきれいごとでは片付けられない。「やはり身売りになるのか」という声が球界内から噴出するのは当然の成り行きだし、王監督の去就にも重大な影響を及ぼす。
「中内功オーナーの意思を引き継いで地元に密着した球団として今後も戦っていきます。新オーナーは現場に大変ご理解いただいて、現場とフロントのコミュニケーションがうまく取れています。さらに地元に密着した球団として、リーグ3連覇、日本一奪回に向けて突き進んでいきます」
王監督は今回のオーナー交代人事に関してこうコメントしているが、建前論にすぎない。
中内オーナーと王監督の間には、2人だけにしか分からない強いキズナがあるからだ。
「長嶋さんと渡辺オーナーの間も全く同じだと思うけど、僕と中内オーナーにしかわからない特別な関係というのがあるんだよ」と、王監督は日ごろから口にしている。
そもそも中内オーナーのツルの一声で誕生した王政権。今年で6年を終え、2年連続リーグ優勝の成果をあげたのも、中内オーナー=王監督の絶大な信頼関係があればこそだ。
「V9を超えるV10が目標だ。あと10年はやってほしい」と、巨人・渡辺恒雄オーナーが長嶋茂雄監督にラブコールを送ったのを意識。「王監督にはあと20年やってほしい」と、V2報告会の席上でぶち上げた中内オーナーが退任してしまうのだから、影響は計り知れない。
しかも、後任がオーナー代行だというのでは最悪のケースだ。「オーナー代行がオーナーになるのなら、王は辞めるよ」と、王監督と親しい球界関係者が断言する。
就任以来4年間、成績がふるわなかったときに、王降ろしを何度も画策したのが、ほかならぬオーナー代行だからだ。
「王監督では勝てない」と、事あるごとに周囲へアピール、王監督解任を仕掛けたのだ。オーナー代行がアンチ王の旗頭になったのにはワケありだ。
オーナーのツルの一声で王政権が誕生、オーナー代行が擁立を決めた古葉竹識氏(元広島、横浜監督)の監督就任がご破算になってしまったからだ。以来、王降ろしに全力を傾けてきたが、リーグ連覇で手のひら返しで王賛歌。
こんなひょう変ぶりを見せる新オーナーに王監督が見切りをつけるのも当然だろう。
[夕刊フジ2000年12月28日]