プロ野球OBはなぜトップになれない?



 プロ野球界から自前の会長を選出すべきだという声がOBたちから噴出している。

 5期10年を務めたパ・リーグの原野和夫会長(元時事通信社社長)に代わる後任として小池唯夫氏(元毎日新聞社社長)が決まり、セ・リーグも健康面の理由から辞任する高原須美子会長の後任人事を急いでいる。

 「官界から1人、財界から1人、名前があがっている。できれば来週中に、遅くとも年内には決めたい」と、伊藤修理事長(中日代表)が言う。

 セ、パ、どちらもはなからプロ野球OBからの人選は念頭に置いていない。

 「OBが組織のトップにいないのは、プロ野球だけ。サッカー界だって相撲だって、OBが組織の幹部になっているのに、寂しいというか、恥ずかしいというか」と、球界OBが嘆く。

 過去に水原茂氏(元巨人→東映→中日監督)がセ・リーグ会長、西本幸雄氏(元大毎→阪急→近鉄監督)はパ・リーグ会長就任へという動きはあったが、実現していない。

 「オレがセ・リーグの会長になり、長嶋さんがコミッショナーになれば、野球界の改革ができ、一番いいんだ」とは、中日・星野監督がかつて充電期間中に口にした言葉だ。

 ユニホーム組にも意欲のある人材がいる。そろそろ本気でプロ野球OBから会長を送り出すことを考えていい時期だろう。

 「今の給料(年俸2400万円)では経団連副会長クラスの人が来てくれない」と、巨人・渡辺オーナーは言うが、財界などから会長を探そうとするから、そうなる。

 天下りのような形で財界、官界からコミッショナー、連盟会長が決まる今のやり方は、ユニホーム組軽視、蔑視の風潮を作っている。今や公然の秘密になっている巨人・長嶋監督と山室代表の確執も、元をただせば同じだ。

 読売でエリートコースを歩んできたと自負する山室代表のやり方は、「しょせん野球選手はという雰囲気が感じられ、現場をばかにしている」と、選手たちからも評判が悪い。球界一のスーパースター・長嶋監督と折り合いがよくないのも当然だろう。

 球団のユニホーム組と背広組が一体になってやれるようになるには、コミッショナー、連盟会長など球界のトップにOBが座ることが先決になる。現場組出身ならではの発想を生かし、長嶋セ・リーグ会長、王パ・リーグ会長で21世紀の球界をリードする。こうなれば理想図だろう。

[夕刊フジ2000年12月15日]