松井4番、風格だけでは不合格



 巨人・松井は今季、公式戦135試合、日本シリーズ6試合、合計141試合にわたり4番の座に座り続けた。長嶋監督は「ようやく、4番の風格が松井に備わってきた」と、シーズンも終盤になって“合格点”を与えたが、まだ最低ラインに過ぎない。

 長嶋監督は松井に向かって「来年も140試合全部、4番を打て」とゲキを飛ばす。

 というのも、「継続こそ力なり」と長嶋監督は、1年だけの結果で、4番・松井を評価するのは「時期尚早」と考えているからだ。

 若葉マークがはずれたばかりのドライバーに事故が多かったり、新人王を獲得したプレーヤーが翌年、2年目のジンクスに悩まされたりするのと同じこと。来季、2年連続して4番に座ってはじめて、真の巨人の4番として評価しようとしている。

 巨人の4番は常に競争の真っただ中にある。来季も松井に4番の座が保証されているわけではない。まず、ケガに強いこと、ケガをしないことが必要条件になる。次に長期スランプにならないことだ。清原、高橋由、江藤らが、松井が不調に陥るスキをねらっている。特に、清原は来季が5年契約の5年目で、自分をより高く売るために、気合が入っている。

 松井の周囲は自分との戦いを含め、敵だらけ。対戦チームの投手陣の攻めがより厳しくなることも覚悟しなければならない。

 長嶋監督が「継続こそ力なり」を口にするのも、巨人の4番を“張り続ける”ことの難しさを知っているからだ。そして、願いも含まれている。

 2002年のサッカーW杯や少子化の影響で、野球人気が右肩上がりであり続けるのは難しい。ONの後を継ぐスーパースターが出なければ、人気低落は決定的。長嶋監督でなくとも、松井が万人のあこがれであるスーパースターになってもらいたいのだ。

 松井もそこは承知している。1日、「2000年ヤナセ・ジャイアンツMVP賞」を受賞した松井は、「今オフにも打撃の微調整を行う。養老(岐阜県)にある工場に行って、バットもまた少し変えようとも考えている」と、進化し続けることを宣言。来季に向け、松井はすでに4番レースのスタートに立っている。

[夕刊フジ2000年12月02日]