ダイエー「暴言」副社長が社長に昇格



 来季リーグ3連覇、日本一奪回を目指す王ダイエーに立ちはだかるフロント首脳改悪人事。王監督が期すONシリーズ雪辱には、身内の敵との戦いに勝つことが先決になる。

 26日、福岡でリーグ連覇を祝う王ダイエーのパレードが行われた。ONシリーズにこそ敗れたが、今や西武を押しのけてパ・リーグの常勝軍団になりつつあるだけに、地元での熱狂ぶりも当然だろう。

 成績面だけではない。観客動員でも野村阪神、星野中日を抜き去り、長嶋巨人に次いでナンバー2の座を獲得している。さらにドラフトでも1位に九州共立大・山村、2位に立命大・山田と目玉コンビの即戦力投手を独占。

 「ウチの投手陣の勢力図が変わる」と、王監督は手放しで喜んでいる。

 先発投手陣が手薄なダイエー投手陣にとって新人王争いを演じる実力を備えた山村、山田の加入は計り知れないプラスをもたらす。早くも「リーグ3連覇間違いなし」という声まであがっている。

 「赤字32店舗封鎖、社員4000人削減」という、新経営再建案を発表するなど、相変わらず青息吐息のダイエーグループにとって、王ダイエーだけが希望の星だ。

 「優勝すれば多大な売り上げ、集客効果がある。ダイエーに対するシンパシーを持ってもらえる。全体の計画を進める中で聖域とは考えていないが、グループの中に置いておくのが適当だと思っている」

 ダイエー本社の高木次期社長が、身売りを否定、こう明言したのも当然だろう。

 ところが、本社の新経営再建案と同時に発表された球団フロント首脳新人事はお粗末な限り。中内正オーナー代行が兼務していた「球団社長」のポストに高塚副社長が昇格したのだ。

 高塚新社長といえば、ホテル業界のリストラ手腕を買われ、球団入りしたが、次々と問題を起こしているダイエーフロントの元凶だ。FA工藤が巨人に移籍したのも、「工藤君の投げる火曜日は観客動員が悪い」という、信じられない高塚発言が原因になっている。しかも文書で契約更改のやりとりまで暴露する始末。

 土、日に比べてウイークデーの入りが悪くなるのはファンにだってわかること。それも分からない非常識な言動で工藤をぶち切れさせたのだ。

 今年のONシリーズの福岡ドームでの日程を抑えておかない大失態で、コミッショナーから3000万円の罰金を科された前代未聞の事件でも問題発言をしている。

 シリーズの期間中に脳神経外科学会に福岡ドームを貸していることが発覚した際だ。「大騒ぎすることじゃないだろう」と、森首相も真っ青の暴言を吐いて、コミッショナーはじめ球界関係者を激怒させている。

 そんな高塚氏が副社長から社長に昇格するのだから、あきれた仰天人事としかいいようがない。「ダイエーには人材がいないから」というのは内部の本音。それにしても、これではまた現場の足を引っ張る新たな不祥事が起きるのは時間の問題だ。

 「今更何が起きても驚かないよ。脱税事件、スパイ疑惑、それに今年のシリーズの球場問題だろう。ウチの選手は何か不祥事が起きてもそれを発奮材料にしているから」−と、王監督は完全に開き直っているが、あきれたフロント首脳に三くだり半を突き付ける日はそう遠くないだろう。

[夕刊フジ2000年11月27日]