W杯は日本代表・長嶋監督だ! 巨人・渡辺恒雄オーナー(74)=読売新聞社長=は15日、東京・内幸町の日本プレスセンターで開かれた新聞協会理事会に出席後、米MLBによる2003年W杯構想に全面協力する意向を示した。以前から五輪のプロ参加に否定的で、W杯を推進してきた同オーナーは、長嶋茂雄監督(64)の日本代表監督就任を視野に入れ、実現に向けて陣頭指揮を執っていく可能性も出てきた。
この“世界の流れ”を待っていた。渡辺オーナーが無条件で支持したのは、やはり『五輪』ではなく『W杯』だった。
「もともと野球協約には世界選手権を争う、というのがある。いいんじゃないかな。五輪はアマで。ワールドカップはプロでやればいいんだ」
このほど明らかになった、米メジャー・リーグによる2003年W杯構想に対し、改めて全面協力の立場を示した。11日には長嶋監督も推進派の1人として「球界全体として意義がある」と賛同している。同オーナーのバックアップとなれば、実現への加速度は増すばかりだ。
シドニー五輪のプロ派遣については反対の立場を明確にした同オーナー。35人プロテクト枠を維持する姿勢を崩さず、巨人としては現実に、同五輪予選から主力選手の参加を拒否してきた。
その理由として、公式戦への影響、アマ野球衰退などをあげてきた。そして、常に引用したのが野球協約第3条(協約の目的)に記されている『わが国におけるプロフェッショナル野球を飛躍的に発展させ、もって世界選手権を争う』という条文だった。つまり、W杯レベルのイベントであれば、主力選手の派遣も惜しまない。実際に同オーナーは「(開催)時期が3月というなら、残った選手(代表漏れ選手)でオープン戦はできるな」と前向きな発言を繰り返した。
W杯が実現したら、ドリームチームの中心はイチロー、佐々木だけではない。打線では4番・松井を中心に、高橋由、仁志ら巨人勢が顔を揃える。投手陣では上原も、西武・松坂と並ぶ両輪として、日本代表選手として派遣されることになる。その日本代表を率いるのは、もちろん、長嶋監督しかいない。
「長嶋監督? (W杯は)あと3年先か。オレはあと(巨人監督として)10年やってもらうからな。間に合うな」
FA制度、ドラフト制度など、巨人は常に球界の改革をリードしてきた。W杯実現に向けても、渡辺オーナー自らが陣頭指揮を執る可能性は高い。
○…時期は2003年3月。開催候補地には米フロリダ州、アリゾナ州をあげている。参加国は米国、日本のほか、大リーガーを輩出しているカナダ、ドミニカ共和国、メキシコ、韓国など8―16カ国になる見通し。すでに米国サイドから日本サイドに参加要請があり、21日に予定される12球団の代表者による実行委員会で、参加するかどうかの検討を開始することになっている。
○…W杯の話題が終わり、渡辺オーナーが自ら切り出したのが代理人問題だった。苦々しい口調で「労使で合意していないし、契約を交わしたわけでもないのに、何で不当労働行為なんだ」と不快感を示した。選手会が要望する代理人交渉を議題に行われた3日のオーナー会議。渡辺オーナーの「弁護士を連れてきたら給料カットする」という発言が、8日の衆院労働委員会で取り上げられた。まだ修正案をまとめた段階での“愚痴”が、思わぬ騒動に発展したことに苛立ちを隠せなかった。
[サンケイスポーツ2000年11月16日]