「ドラフトが終われば、本格的な作業に入るでしょう」と、長嶋監督が明言。17日に都内ホテルで開催のドラフト後に、巨人が全力を傾ける大物メジャーリーガーのクローザー獲得には、危険と不安がいっぱいだ。
「ウチの最大の補強ポイントは、捕手と抑え投手」と言い続けてきた長嶋監督。ドラフト1位でアマ球界のナンバーワン捕手といわれる中大・阿部を獲得することで、後はストッパー1本に絞っている。
「国内ではいないなあ。ウチは最初から外国人でと考えていた。いろいろリストはありますけど、その中からピックアップして−」という長嶋監督の頭の中には、ダイエー・ペトラザ、中日・ギャラードといった抑えの外国人投手が描かれているのだろう。
シーズン中は「ギャラードはボールが速いし、いい抑えだ」と、何度もため息。ONシリーズ中には「スピードはさほどないが、多彩な変化球と絶対に高めにこないコントロールのよさは抜群。なかなかペトラザは打てないよ」ともらしていたものだ。
「ウチはついに一度も抑えがいないままシーズンが終わってしまった」と嘆く長嶋監督にとっては、必要以上に他人の芝生は青く見えるのは仕方ない。
が、実際に巨人の外国人選手獲りとなると不安だらけになる。最近活躍しているのは、他球団の中古選手ばかり。
元西武のマルティネスは、お金にならないメキシカン・リーグに在籍。「もう一度日本でやりたい」という、代理人を通じての売り込みに巨人が飛びつき、成功しただけ。ONシリーズには敗れたが、リーグ連覇を果たしたダイエー・王監督がこう断言するのだ。
「だいたい日本シリーズで守るところがないという理由で西武がクビにしたこと自体、おかしいんだよ。ペナントレースで勝たなければ、シリーズには出られないんだからね。ウチが優勝できたのは、マルちゃんが西武からいなくなったからだ。巨人で活躍するのは当たり前」
今季、大活躍をしたメイにしても阪神・野村監督のおかげ。野村監督と衝突して監督批判のビラを巻いたということでクビにしてくれたから、獲得できた。
「あんないいピッチャーがおったのに、なんで出したんや。要するに野村監督には外国人選手を見る目がないということですワ」と、阪神内部からも批判の声があがっている。
他球団首脳が判断を間違って解雇した外国人選手だけが成功しているのだ。自ら巨人フロント首脳が獲得に乗り出した選手は外ればかり。悲惨だったのは昨年シーズン中に獲得したデセンス。8試合に登板、0勝1敗の成績でクビ。
「優勝するためにどうしても新外国人投手が必要」という長嶋監督のキャンプ中の直訴を渡辺オーナーが認め、「いくら金を使ってもいいから大物外国人投手を取れ」とフロントに大号令。それなのに、取ってきたのがこのデセンス。
しかも、獲得するために、2、3カ月もかかり、フロントが4、5人も代わる代わる渡米して大金を使っての結果だ。
今回もどんな投手を連れてくるかわかったものではない。FA選手獲得資金まで回した、金の威力でビッグネームを獲得したら、性格に難あり、過去に危ない前科ありなどといった心配まである。
“実績”がある。過去に何も知らないで、女装した警察官の買春オトリ捜査で逮捕された、前科のある大物メジャーリーガー投手と契約。その後、事件を知り、あわてて契約解除という前例もある。
「岡島がONシリーズで一皮むけたのだから、来季、抑えに固定すればいい」という、巨人OBの声の方に説得力がある。
[夕刊フジ2000年11月15日]