仰天!21世紀“王巨人”誕生シナリオ



 6年ぶりの日本一奪回を果たした巨人の渡辺オーナーがダイエー・王監督を絶賛。その裏には、21世紀スタートの2001年にONシリーズ再現、その後は長嶋監督から王監督にバトンタッチという、シナリオが見え隠れする。

 オーナー就任4年目で初めてリーグ優勝、日本一を手にした渡辺オーナーは、長嶋監督から日本一報告を受け、感激を新たにする。同時に「今年も去年以上に補強をする」という方針を確認、補強をスタートさせる。

 「勝因は戦力の強化。監督とフロントが一体になり、考えた。方法を聞いたオレは金を出しただけ。計画的に人材を獲得できた」と、ミレニアム日本一を評価しているからだ。

 そして、「ウチは来年も再来年も優勝する。ダイエー・ホークスに(経営不振を)持ちこたえてもらい、またON対決をしてほしい」と、来季以降のON対決実現を強く訴えるが、注目されるのは、王監督への賛辞だ。

 「公私に親しい」ことを強調した上で絶賛する。

 「ワンちゃんはたいしたもんだ。よくやった。ONは巨人だからな。両方勝たせたかったが、そうはいかん」

 王監督の手腕をホメちぎりながら、本籍地・巨人をことさら強調したのだ。渡辺オーナーの言葉は意味深長だ。ポスト長嶋の切り札といわれる王監督の巨人復帰ラブコールとも受け取れるからだ。現に読売関係者が王監督に接触済みという情報まである。

 長嶋監督、王監督を取り巻く状況も来オフにバトンタッチのシナリオ説に拍車をかける。

 「ダイエーの監督をやるのはあと1年」と、王監督は知人にもらしているという。

 「いつまでも藤田さんの厚意に甘えてばかりいられない」のがその理由とか。

 巨人監督を解任されたあと背広姿の王監督が心血を注いできたのが、WCBF(世界少年野球推進財団)の仕事だ。世界中の少年、少女に野球を広めようという目的で、財団になったのも王監督に尽力があったからだ。

 「1年に1回の大会に3億円はかかる。バブルがはじけた今、スポンサー捜しなど大変なイベントだ」と関係者が言う。王監督がダイエー監督に就任したときにこのビッグイベントを引き継いでくれたのが、藤田元司氏(元巨人監督)だ。

 「ワンちゃんがユニホームを脱ぐまで面倒をみてやる」と、この6年間、常務理事として全力投球してきたが、ここへきて健康を害している。話題沸騰だったONシリーズの解説の仕事もキャンセルしたほどだ。

 王監督が「いつまでも藤田さんに任せっぱなしにできない」というのも、納得できる。理由はともあれ、ダイエー監督を来季限りで勇退すれば、ポスト長嶋の切り札と考える読売グループの関係者にすれば、格好の機会になる。

 「V9を超えるV10が夢。オレがオーナーの間は長嶋監督に付き合ってもらいたい」と、渡辺オーナーからラブコールされている長嶋監督も、勇退の時期を熟慮している。

 「冗談じゃない。あと10年やったら、74歳になってしまうよ」と苦笑する長嶋監督は、来年の2月で65歳になる。来季続投は決まっているが、Xデーを巡り、騒がしい。

 「監督のことだから、『日本一になったから、もういいだろう』と、突然、言わないだろうな。言いかねないし」と、周囲をヤキモキさせたほど。常識的に考えれば、21世紀のスタートの来年もONシリーズを実現したら、勇退の花道になるだろう。

 「原はよくやっている」と、長嶋監督は原ヘッドに政権禅譲を口にすれば、王監督も「巨人復帰? 冗談じゃない。いつまでも60過ぎがやる時代じゃない」と若返りを勧告する。あとは、読売グループ首脳がON2人をどう納得させるかが、問題になってくる。

[夕刊フジ2000年10月30日]