3連勝で、日本一へ先に王手をかけた長嶋巨人。舞台裏では、このままいったらいったいだれにMVPをやったらいいのか、と混迷している。
第4戦で値千金の決勝ソロを放ったが江藤が、28日の第5戦でも1点リードで迎えた五回に追撃の2号ソロを放ったから、なおさら話がややこしくなった。
江藤は試合後、「MVPの手ごたえ? そんなのない。おこがましいですよ」と話したが、その通りだろう。宮崎で行われた日本シリーズ直前合宿中、門限を破ったうえ、女性から「性行為を強要された」と週刊誌で告白される騒ぎを起こしたばかり。
それとこれとは別問題、ではあるが、とても胸を張って祝福される立場でない。死球の影響と不振で、第3戦ではスタメン落ちもしている。
ほかの候補も決め手にかける。勝ち試合2試合で貴重な本塁打を放っている高橋由は、第1戦と第2戦では計9打数ノーヒット。スタメン落ちも検討されたほどで減点。全試合安打で打率4割の清原も、本塁打なしで地味。松井の2本塁打も印象が薄い。
そんな中、意外にチーム内で評価が高いのが仁志だ。殊勲打はない。しかし、連敗で迎えた第3戦。同点の二死二塁のピンチに、横っ飛びファインプレー&絶妙バックホームで、シリーズ全体の流れを変えた。第4戦でも再び、斎藤雅を助ける美技。
篠塚内野守備コーチは「MVPは、どうしても派手な本塁打が評価されがちだから、仁志が不利なのは確か。しかし逆に、守備が評価されることもあるんだという、いい前例になってほしいよね」と最大級の評価。仁志自身、「うちは、点を取る人は他にもたくさんいるけれど、点を防ぐ人はいないからね。いい仕事ができている手ごたえはある」とまんざらでもない。
シリーズMVPは、セ、パ両リーグの事務局長および記録部長の話し合いで選出され、賞金400万円と高級車の賞品が贈られるが、ゲットするのは果たしてだれか。
[夕刊フジ2000年10月28日]