タカ打線、オチョクリ投法にヤラレた!



 最初に2連勝したチームの日本一の確率は91%。「残りの9%の仲間入りはしたくないね」といって、本拠地、福岡に入った来たダイエー・王監督、まさかの3連敗で王手を先に取られてしまった。

 第5戦の先発の若田部は藤井人形を自らベンチに運びながら、「一番やってはいけないのが空中戦(本塁打)だよ。守っている人が防ぎようがないもの」といっていた。そのやってはいけない空中戦を3本も食らってしまったのだ。

 ダイエー打線は“ストライクゾーンからの落ちる変化球に弱い”というデータが、巨人バッテリーには伝えられていた。ダイエーサイドでは、それを分かっていながら、上原、斎藤雅、高橋尚の変化球を打ちあぐんでしまった。

 「ウチの連中はまだ若いんだよ。ストライクゾーンの中で攻めてくる相手には強いけど、オチョクリ投法には弱い。力勝負以外で負けてしまった」と、黒江助監督はダイエー選手の純粋さを嘆く。ある球団職員は「ウチもいろいろあるけどGはもっとあるのに、打たれ強いねぇ。百戦錬磨だ」と巨人のしたたかさに舌を巻いていた。

 ダイエーの選手サロンには、中内オーナーが自ら書いた“昔は巨人・大鵬・卵焼き。今はホークス・曙・ハンバーガー”と書いた文字が躍っていた。本拠地でのダイエーは、曙の負けるときのパターンと同じように、変化にもろかったのだ。

 足を痛めていた松中が、それをかばって自分のバッティングを崩している。わき腹痛の小久保も自分のバッティングができていない。この2人のチームリーダーは「明日の上京前には藤井さんの霊前を訪れてから空港に行こう」と話した。

 主将の秋山は「今までのシリーズで先に王手を取られてから逆転した経験が3回もあるんだ。昨年日本一になった意味は、これから出るんだ」と、巨人に流れが行き始めていると見る世相に猛反発した。

 「連勝したとき、あの強い巨人に勝てるのではと色気が出た。ここまで来るとかえって開き直れる」と先に追い込まれたときの効用を秋山はボソボソと語っていた。

 「3連勝できる」と最初からミーティングで言っていたという王監督。「一日も早く野球を離れたい」と言って、東京を離れてから6日、「一日でも長く野球をやりたい」と前言を翻したのだ。泣いても笑ってもあと2日だけだ。

[夕刊フジ2000年10月28日]