巨人不祥事地獄…でも長嶋「辞めない」



 杉山、江藤と異例の宮崎シリーズ・キャンプ中の相次ぐスキャンダル発覚で揺れる巨人。くすぶり続ける長嶋監督の勇退説に拍車をかける格好になっている。そんな中、長嶋監督が勇退説を一蹴した。

 「本当に前代未聞のことだよ。大事なシリーズだというのに−」と、まゆをひそめる長嶋監督だが、こう語気を強める。

 「こんなことにめげませんよ。やりますよ。これからを見ててください」と、ONシリーズを制しての6年ぶりの日本一、さらに来季への意欲を明かした。

 「杉山事件、江藤問題は、長嶋監督が発案した異例の宮崎シリーズ・キャンプで起きた相次ぐ不祥事だけに、長嶋監督は責任を取って辞めるのでは」という、勇退説を一蹴したのだ。

 杉山事件では監督不行き届きで渡辺オーナーから「戒告処分」を科されており、相次ぐ不祥事に責任は痛感している。が、勇退という形で決着を図るつもりは全くない。

 というのも、チーム内でも「長嶋監督の責任ではない。フロント首脳の責任だ。辞めるのはフロント首脳の方だろう」という声が圧倒的だからだ。

 「なにしろやることがこそくだ。杉山が逮捕される直前に退団届を出させ、『逮捕されたのは巨人の選手でなく、元巨人の選手です』という、体裁を作ったり、江藤の件でもモミ消しを図り、失敗している」と、内部告発が飛び出す。

 「江藤の美人局事件では相手から、1000万円も要求され、話し合いが決裂。出版社にタレ込まれたのが真相」という、新たな証言まである。

 今回の不祥事の対応、発覚後の手際の悪さは、フロント首脳の責任で、現場の監督が負うものではないという、チーム内の声は当然だろう。

 過去に12球団でさまざまな事件、スキャンダルが起きているが、現場監督が引責辞任した例はないのだ。西武で起きた主力投手のマージャントバク事件でも、監督は辞任していない。

 例外的なケースは1度だけ。幼女暴行事件のときに、事件を起こした選手と監督が同郷で師弟関係にあったということで、監督が責任を感じて辞任している。

 今回の巨人のケースで長嶋監督が引責辞任する必要性は全くない。日本一になることがみそぎになる。球界OBがこう強調する。

 「親の心子知らず。せっかく日本一奪回を目指して張った宮崎キャンプなのに、不心得者が2人出てしまったということ。他の選手はそうでなかったということを証明するためにも、日本一を奪回しなければいけない。日本一になることが、宮崎キャンプをしっかりやっていた証拠になるからだ」

 長嶋監督が声を大にする「こんなことではめげません」というのは当然のこと。まずは王手をかけたONシリーズを制して勇退説を一掃。来季へ向けた補強に着手する。

[夕刊フジ2000年10月28日]