王監督ダイ誤算…小久保痛っ4番復帰



 【巨人6―0ダイエー】出る。その結論を下したからには、泣き言は言えない。しかし、打てなかった。そして何より守れなかった。動いただけで痛みが走る左脇腹。主砲・小久保の抱えた“大爆弾”が、まさかの3連敗を呼ぶ衝撃の一打を呼んでしまった。

 「最後の方、痛かったです…。あれが、精一杯のプレーでした」

 シリーズ直前、小久保の左脇腹が悲鳴をあげた。腰、背筋…。シーズン中に痛みが出た箇所をかばい続けている間に、とうとう長距離砲の泣き所ともいえる部分に負担がかかった。みぞおち部分に両手をあて「このラインに痛みが走るんです」と嘆いたのは23日の第3戦前。ろっ骨の間が、しくしくと痛む。試合のなかった24、25日の両日は、練習を休んで治療に専念。それでも簡単に快方へは向かわない…。

 この日も、守備練習は回避した。ティー打撃だけで打撃練習も止めた。それでも巨人の先発は左腕の高橋尚。負ければ後がなくなる重要な一戦。右の主砲がいるかいないかでは相手への影響も、自陣の攻撃力にも格段の差がついてしまう。王監督は悩んだ。

 どうする…。麻酔の注射を打ってまで小久保は「出る」と言った。しかし、その闘志とは裏腹に打っては3タコ。そして2点をリードされた七回の守備だ。巨人・江藤の三塁への緩いゴロ。前進、素手で捕って一塁送球。ところが体を捻り切れず送球が浮いた。足は決して早くない江藤がセーフ。このランナーを残して村田真のダメ押し2ランが左翼席へ突き刺さった。小久保の痛みが、鷹の“致命傷”につながるという皮肉な結果が生まれた…。

 「注射を打ったりしていたようだけど、やっぱりキツそうだったな」

 王監督が苦渋の表情でつぶやいた。決断は裏目に出た。高橋尚の前にわずか2安打のみ。今季わずか1度しかなかった福岡ドームでの3連敗を、肝心の舞台で喫した。

 ○…後がない王監督の口から総動員令が出た。「あすは総力戦。リリーフ陣も総動員させる」。先発予定は永井。チームとは別に、この日のうちに東京入り。「ぼくは東京でがんばります」と背水の陣に備えた。先発が崩れれば、今シリーズで巨人に得点を許していない渡辺正、吉田修らリリーフ陣をどんどんつぎ込む。「総動員? 当然です。とりあえず、あすしかないんですから。いつでもどこでも“いけ”といわれればいきますよ。1試合負けたら終わりなんですから」。吉田もプレッシャーのかかる場面を想定していた。

 ●…ダイエーは秋山、城島の安打のみ。2安打は1試合最少安打タイ。最近では昨年、中日がダイエー第3戦で永井―篠原―ペドラザにやられている。

 中日と巨人が各4度、近鉄と日本ハム(東映時代をふくむ)が各2度、阪神とヤクルト、ダイエーが各1度と15度記録された。

 ダイエーは第4戦の二回から17イニング連続無得点。最近では昨年の中日が21イニング連続無得点だった。シリーズの最多連続イニング無得点は昭和33年、巨人の26イニングス。

 ○…ダイエーは巨人に3勝2敗と王手をかけられた。3勝2敗は過去33度(引き分けがあった昭和28、37、61年を含む)あるが、スンナリ優勝を決めたのは17度。ひと息いれたのが16度と、ほぼ互角だ。

 今シリーズで面白いのは、ダイエーが東京ドームで2連勝。巨人が福岡ドームで3連勝。つまり、シリーズ第1戦からビジターチームが5連勝していること。これは史上初の珍記録だが、ということは第6、7戦はビジターのダイエーが連勝して逆転V? 王さん、あきらめるのはまだ早い。

[サンケイスポーツ2000年10月28日]