謝罪、謝罪の1日も長嶋さん笑顔でタイ



 【巨人2―1ダイエー】巨人が苦境を乗り切り、2勝2敗のタイとした。長嶋監督は福岡市内で杉山元捕手の逮捕に関してファンに陳謝し、ミーティングでは選手を厳しく叱咤した。さらに、江藤が女性とトラブルを起こした―と写真週刊誌で報じられ、しかも1000万円の脅迫事件に発展していたことが判明するなど、大激震状態に陥ったが、その江藤の一発と斎藤雅の力投で、2―1の逃げ切りに成功。ミスターの長い1日は、笑顔で幕。

 あのカン高い声が裏返っていた。苦難を乗り越えた安堵感、充実感、満足感がどこまでも心地よい。長嶋監督の長い1日は、最高の笑顔で締めくくられた。

 「両チームとも投手陣がよく、前回(第3戦)より締まった、いい試合、いい雰囲気でした。3戦目はウチの豪打、きょうは斎藤、岡島で仕上げてくれた」

 勝利監督インタビューがググッと熱い。こんな状況で、果たして長嶋巨人は勝てるのか…。そんなG党の不安が希望に変わる。連敗のあとの連勝。災い転じて福となった白星に、緩んだ頬はなかなか元に戻ることはなかった。

 前日25日、チームを襲った杉山逮捕の激震。日本シリーズ中の前代未聞の不祥事で、憂鬱な1日が始まったのは午前9時。宿舎近くを散歩しながら「責任者としてファンの皆さんに謝罪しなければならない」と沈痛な面持ちだった。

 ほかでもない。その事件が起きた宮崎でのシリーズ合宿は、長嶋監督が強く要望したものだ。「さすがにミーティングでは触れざるをえないな」と同監督だったが、さらに事態は悪化した。この日、江藤が同じ宮崎合宿中、女性問題に絡む恐喝事件に巻き込まれていたことまで発覚した。

 シリーズ中に立て続けに起きたスキャンダルに、恐れをなさない指揮官は、どこにもいない。

 張り詰めた空気の中での試合前のミーティング。山室球団代表から杉山逮捕の経緯、改めて自覚を促す注意が与えられた後、長嶋監督も選手の前に立った。とにかく今は、シリーズ中であることを再認識させないといけない…。「今は野球に集中しよう」と声を大にして叫んだ。

 あらゆる意味で注目を集めた第4戦だ。一回には清原が中前に先制タイムリーを放つ。同点にされた直後の二回には、特異な視線を浴びる江藤が左中間へ勝ち越しソロを見舞った。

 投げては、先発の斎藤雅が七回途中まで1失点。岡島への継投も成功し、今シリーズで初めて見せた“守り勝ち”だった。タイに持ち込んだことで、第6戦以降の本拠地・東京ドームに戻れることも決まった。

 「こういう短期決戦は1戦、1戦が大事だ。どういう展開になるかはわからないが、タイにして、ウチにとっては上げ潮でしょう。きょうは投手戦、あしたは打撃戦かな?」

 球場から地下通路を通って、長嶋監督が宿舎に消えたのは午後10時前。約13時間に及ぶ苦闘を制して、何よりも“潮の流れ”を変えたことが大きい。ON決戦はいよいよ、長嶋巨人モードに入ろうとしている。

 ○…巨人が勝って2勝2敗。○○●●(ダイエーから見た場合)は9度目。ダイエー、巨人ともビジターで連勝だが、こういうケースは昭和55年の近鉄―広島、57年の西武―中日、60年の阪神―西武がある。

 過去8度のうち、先に2勝したチームが優勝したのは5度、追いついたチームの逆転優勝は3度となっている。

[サンケイスポーツ2000年10月27日]