巨人・長嶋茂雄監督(64)が、ON友好ムードを打ち破る「ケンカ野球」を発令した。1、2戦でダイエー投手陣から江藤、松井の両主砲が死球を見舞われたことに怒り心頭となったもので、ますます決戦ムードは盛り上がってきた。
巨人の首脳陣によると、ダイエーに屈辱の連敗を喫した22日の第2戦終了後、長嶋監督は鬼の形相で鹿取投手コーチをしかりつけたという。
「なんでうちのピッチャーは内角をもっと攻めないんだ。お嬢さん野球をやってるんじゃない!」
ダイエー投手陣は、第1戦で若田部が江藤の左ひじへ死球を与え、続く第2戦では永井が松井のしりにぶつけた。
江藤はオープン戦で古巣の広島戦でビーンボール攻撃を受けて打撃をすっかり狂わせたことがある。松井も第1戦で本塁打を打って乗りかけていたところとあって、攻めが厳しくなるのは当然だ。
ところが、巨人投手陣は以前から、味方野手陣がぶつけられていても、「敵に対する攻めが甘過ぎる」とチーム内外から批判の声が挙がっていた。短期決戦の日本シリーズでも“お人よし”は相変わらず。ついに、長嶋監督のイライラも我慢の限界を超えた。
打者の厳しいコースを突く、攻める姿勢こそが、長嶋監督のいう「正々堂々と戦う」という意味であることを選手に示したのだ。
それだけではない。巨人サイドは、ダイエーの「クセ盗み」にも神経をとがらせている。
23日のダイエー戦で勝利投手となった上原が試合後、4安打集中で一挙3点を奪われた二回を引き合いにして、「投げる球種がばれていたと思う」と“告発”した。
「クセなのか、サインが盗まれているのかはわからない」としながらも、「(無失点に抑えた)三回以降は、二塁にランナーを出さなかったから…」と、二塁走者が、なんらかのしぐさで打者に球種を伝えていた疑惑を示唆。サインを変更するなどの対策に乗り出した。
友好ムードで始まったONシリーズ。シリーズ開幕直前の監督会議でも、毎度お決まりの、相手投手のボーク疑惑指摘などは一切なかった。むしろ試合前に、あいさつやサインを求めるために、相手ベンチを訪問する球団関係者も多い。
清原は親しい関係者に「(西武時代の同僚の)秋山さんに、鍛え上げた体を見せることができて、うれしかった」と笑顔で話していたほど。
そんな中、長嶋監督が先にキバをむいた。
23日から27日まで両チームは同じホテルに同宿。「不思議と顔を合わせることはない」(巨人スコアラー)という両者に、4戦を前にして、ついに火花が散り始めた。お嬢さん野球からケンカ野球に脱皮した巨人がタカをどう攻めたてるのか、決戦ムードがヒートアップしてきた。
[夕刊フジ2000年10月26日]