巨人爆勝のウラに爆笑!鼻毛切りが…



 最悪の本拠地連敗から一転して敵地で突然、大爆発した巨人。その裏には笑いと怒りあり。長嶋監督が本来の姿を取り戻す、爆笑劇の連発。そして怒りに火をつけた一部週刊誌の勇退報道があった。

 江藤をスタメンから外し、7番・三塁に元木を起用しただけではない。3番清原、4番松井、5番マルティネスの新クリーンアップ。6番に降格の高橋由という、長嶋監督の荒療治が大成功した。

 絶不調だった高橋由がよみがえり、自慢の200発打線が復活したのだ。それも当然だった。

 「ベンチの長嶋さんが暗いよね。あの人が明るいとチームのムードが乗って来るのに」と、ダイエー首脳陣までが心配する、“暗”の長嶋監督が本来の“明”の姿に戻っていたからだ。

 爆笑劇の連発だ。ダイエーフロント首脳の不手際から移動日なしの福岡ドームでの第3戦に向かう羽田空港が第一幕の舞台。手荷物検査の金属探知機でひっかかり、バッグをチェックされたのだ。

 「ウーン、何かあったの?」と長嶋監督は、復活した例の調子だったが、ひっかかったのは、何と鼻毛切り用のハサミだった。

 第二幕目は福岡ドームの練習中。監督室へ引き上げようと、三塁側ベンチ付近にきたが、なぜかバットケース寄りにある出入り口でなく、一番右翼寄りに戻ってきた。その後、大報道陣に囲まれ、モミクチャになりながら、出入り口に。

 「いかんなあ、どうも勘が鈍っているなあ」と苦笑して爆笑を誘ったのだ。どうやらナゴヤドームの出入り口と勘違いしたようだ。

 こうなれば、完全に長嶋監督のペース。ダイエー首脳にすれば、心配して大損の結果だ。

 なぜ長嶋監督が突然、復活したかといえば、渡辺発言ショックを吹き飛ばす、怒り爆発の勇退報道があったからだ。

 一部週刊誌が明らかにONシリーズのタイミングを狙ってのシリーズ終了後の勇退情報を伝えたのだ。最大の根拠として、4年ぶりのリーグVを決めた、東京ドームの最終戦に亜希子夫人を呼ぼうとしていた事実をあげている。

 「こんな時期にまだそんなことを書いているのか」と、周囲に不快感をあらわにしたという。

 「第一、奥さんを呼ぼうとした事実なんかないんですから。だいたい情報の出所はわかりますよ」と、球団関係者が言い切る。

 勇退報道への怒りは、渡辺オーナー発言のショックを吹き飛ばす効果があった。

 「オーナーが言うことをいちいち気にしていられませんよ。本音はわかっていますから」と、日ごろから強調している長嶋監督だが、そうではない。

 シーズン中もオーナーの問題発言があるたびにチームは大きな影響を受けている。世紀のONシリーズの第1戦の逆転負け、それでなくともショックなのに、「槙原はないだろう、バカな」と、オーナーにサイ配批判されれば、立場がない。

 熱狂的な巨人ファンの酔っ払いのおやじの無責任な発言ではないのだ。本拠地連敗はオーナー発言の後遺症ともいえる。それが、第3戦でようやく消えた。

 「世紀末のONシリーズで日本全国を熱狂させる」という、長嶋監督の公約は、第4戦からようやく実現へ向かう。

[夕刊フジ2000年10月24日]