長嶋巨人の“反乱分子”がダイエー・王監督に寝返り? 全く予期せぬ、本拠地での連敗スタートになった長嶋巨人。舞台裏でも火種がくすぶっている。世紀のONシリーズの舞台裏は一気に生臭くなってきた。
東京ドームを舞台にしたONシリーズ第1戦(21日)、ダイエーの試合前の練習中に事件は起きた。
槙原、斎藤雅、桑田の旧3本柱、野手のベテランコンビの川相、村田真の5人が突然、一塁側ベンチから現れ、王監督の元へ駆け寄ると、あいさつ。人目を避けるように、アッと言う間にUターンする電撃行動を起こしたのだ。
一瞬のスキを突いた出来事だけに、大報道陣も何事かと、戸惑ったほど。
「騒がれないようなタイミングを狙っていた」というベテラン5人衆の速効勝利だった。
全員が昭和59年から63年まで続いた巨人・王政権時代に縁が深い選手ばかりで、しかも今、リストラ線上にいる。一方、王監督には巨人復帰説まで流れている。
「何で槙原なんだ」と、第1戦の救援に失敗、渡辺オーナーから戦犯扱いされた槙原。第2戦はベンチを外れた。シーズン中のダメ魔神ぶりをシリーズで汚名返上しない限り、肩たたきされる窮地だったのに、逆にダメ押しになりかねない。「ただのあがりです」と言葉少なだったのも当然だろう。
横浜を退団した駒田、吉村氏(評論家)と並んで、王監督時代に「50番トリオ」として売り出した槙原にすれば、王監督に救いを求めたくなるのが人情か。
今やダメ魔神第2号扱い、シリーズの敗戦処理役として、第2戦に登板した、桑田にしても同様だ。
「まだまだ桑田は使える」と、もらしているという大事な恩人の王監督は救いの神様に映るだろう。
いまだに清原の恨みを買っている、王監督の電撃的な桑田ドラフト1位指名劇。それだけでも一生頭が上がらないだろう。
シーズン終盤の活躍で来季の生き残りに成功したとみられている斎藤雅にしても、シリーズの結果次第ではリストラ線上の危機に逆戻りもある。
それだけに、旧3本柱がそろっての王監督への電撃あいさつ事件は意味深長だ。しかも今季、胴上げ秒読みに入り、モタついたとき、「生え抜きのこの2人にリーダーシップを」と、長嶋監督が個人的に緊急ミーティングした村田真、川相までが同調。長嶋監督とすれば、心穏やかではないだろう。
造反5人衆(?)の中でもとくに槙原、桑田の2人はFA絡みで一気に周辺がキナ臭くなる。
「10年でFA資格を取った選手の再取得を特例として、4年でなく、3年にしてほしい」という、桑田の要求が労組・選手会(古田会長=ヤクルト)を通じて経営者側に出され、了承されたのだ。
これで桑田、槙原はFA資格を再取得したことになるのだ。ところが、単純に喜んでばかりはいられない。解雇と背中合わせの危機になったからだ。
「FAになったのだから、ご自由に移籍をどうぞ。補償金が発生すると、獲得したい球団が腰を引くといけないので、自由契約にしてあげます」と、球団から逆襲される可能性が出てきた。FAになったとたんロッテを自由契約にされ、横浜へ移籍した小宮山の二の舞いだ。
桑田、槙原の年俸2億円コンビにとっては、ヤブヘビ、FA破産の大ピンチになりかねない。
[夕刊フジ2000年10月23日]