日本一に暗雲…長嶋監督ショック大誤算



 【ダイエー8―3巨人】監督室に歩を進めるスピードが異様に早かった。うつむき、声も小さく、顔も真っ赤になっている。長嶋監督は何かを肌で感じ取っていた。

 「メイはよかったんだけどなあ。あの回はタマが高かったな。中継ぎ陣の差が出たな」

 本拠地・東京ドームでまさかの連敗スタートだ。集中砲火を浴びた“魔の五回”が、なかなか頭から離れない。監督として出場した過去4度のシリーズで、連敗発進した3度とも日本一になった例はない。データまでが緊急事態の発生を告げていた。

 【ブランク】

 ペナントレース終了は9月29日。シリーズ開幕までの3週間のブランクが最大の敵だった。長嶋監督は宮崎合宿を行うほか、投手陣に黒潮リーグ参加を命じるなど、日程との戦いに苦慮してきた。「それはダイエーも一緒だ」と言い分けの材料にしなかったが、この日、五回途中でKOされたメイは9月26日のヤクルト戦(神宮)以来、26日ぶりの実戦。「3週間も空いたら疲れが出る。きつい」という言葉に、ナインの本音が凝縮されていた。

 【経験不足】

 2年連続シリーズ出場のダイエーに対して巨人は4年ぶりの大舞台。長嶋監督は「ウチは選手の3分の2が未経験」と心配していたが、とくに打線で不安が的中した。初出場の高橋由は、この2戦で9打数ノーヒット。広島時代に1打席立っている江藤も実質初出場で、2戦で7打数1安打(バットが折れた三塁内野安打)と打てるムードがない。

 戦前の予想を覆す連敗発進は、こうした要素が重なったものだ。もちろん、このまま引き下がるワケにはいかない。きょう23日から舞台が福岡ドームに移ることで、そこに突破口を求めるしかなくなった。

 【打開策】

 代打の切り札・マルティネスがDHで先発出場する。西武時代を含めた福岡ドームでは、通算打率・315(111打数35安打)をマーク。とくに29試合で24打点という勝負強さを発揮している。しかも当初は「7番」を予定していたM砲を、長嶋監督はクリーンアップで起用する方針。「短期決戦だけにあしたはやりますよ」と打線の組み替えを宣言した。代わって不振の高橋由、江藤を下位に降格させる。

 「福岡に行って、気分転換したい」と長嶋監督がうめいた。20世紀を締めくくるON決戦を、このまま終わらせるワケにはいかない。第3戦以降の逆襲を、全国のG党は信じている。

 ●…前日21日の第1戦で炎上した槙原が、第2戦のベンチ入りメンバーから除外された。鹿取投手コーチは「槙原が使いにくくなったということはありません」と庇ったが、第2戦試合前のスタッフ会議で決定した。槙原は第1戦、同点の九回に登板。3安打2失点で敗戦投手になったほか、左ふくらはぎ肉離れの影響で連投がきかないこともあり首脳陣が判断した。槙原は「首脳陣に従います。あす以降は分かりません」と、寂しそうに夜のうちに第3戦以降の舞台となる福岡へ向った。

[サンケイスポーツ2000年10月23日]