王ダイエーが大逆転で2連勝!



 【ダイエー8―3巨人】王ダイエー、恐るべし…。夢のON決戦第2ラウンドは、前日に引き続いて王ダイエーが余裕の、怒涛の、ラク勝の大逆転勝利で敵地連勝を飾った。きょう23日は当日移動で本拠地・福岡ドームに凱旋。第3ラウンドに臨む。王監督は昨年から通算して日本シリーズ5連勝。対する長嶋巨人はよもやの緊急事態だ。

 痛い、辛い…。実は大きなハンデを抱えていた。それでも王監督は、4番の座に小久保を据えた。それが主砲の使命、仕―。五回、打者10人の大逆転劇。勝ち越しの一打は小久保だった。

 「前の2打席、結果が出てなかったですから、がむしゃらにいきました」

 3点を追うこの回。巨人の先発・メイにまずは4安打を浴びせ、1点差に追いつめてKO。2番手・木村から大道が左前タイムリーで同点。続く一死一、三塁で、小久保の第3打席が訪れた。

 試合前、左わき腹から腰にかけ激痛が走った。アップの最中、2人のトレーナーに付き添われてベンチ裏に消えたほどだった。当然打撃練習は回避。代わりに入念なハリ治療だ。

 主砲の故障。ダイエーベンチに大きな衝撃が走ったが、王監督は何事もなかったように言い放った。

 「何か、ちょっとあったらしいね。でも、スタメンには名前を入れてるよ」

 バットを振るだけで痛い。一、四回の2打席はいずれも空振り三振。しかし、打線に火がついた。この勢いを消せない。勝負はひと振り。研ぎ澄ました集中力は巨人・木村の投じた初球、130キロのスライダーを見逃さない。左翼線へ運ぶ二塁打で、勝ち越しの4点目を叩き出した。

 9年連続日本一。巨人の栄光を築いた一塁手・王貞治。現ロッテ監督の山本功児が、王の控えとなるまで20年間にわたり、巨人の一塁手は王1人だけだった。試合前のノック。内野の他の3ポジションには2人ずつ。しかし一塁は王だけ。だから小久保を外すことはしなかった。

 小久保だけではない。巨人の選手に比べれば、圧倒的に知名度は低い地味な男たちが、横綱軍団を縦横無尽にカキ乱す。井口、柴原、鳥越、大道…。結局五回は7安打を繰り出す猛攻撃。ホームランで相手を蹂躙してきた巨大軍団を、単打、二塁打のみのしつこい“真綿攻撃”で瞬く間に撃沈。敵地・東京ドームで強者の証明ともいえる連夜の逆転勝利を成し遂げた。

 「残り試合、早く終わって、休みたいですね。4タテ? そうそう甘くはいかないでしょうけどね。痛み止めを飲んで福岡でも頑張りますよ」

 九回の第5打席。ハーフスイングでまた痛みが走った。それでも小久保は4番の仕事を果たした。連夜の逆転勝利、敵地2連勝。王監督のその言葉が、謙そんに聞こえなくなってきた。

 「早く野球を終えて、オレはゴルフに行きたいんだよ」。笑いながら明かす日本シリーズ後の“夢”。それが意外と早く訪れるかもしれない。連覇への手応えをつかんで、王ダイエーは福岡へと舞い戻る。

[サンケイスポーツ2000年10月23日]