ダイエーは17日、日本シリーズ前の最後の休日をとった。腰痛持ちの小久保は整体に出かけ、秋山は専属トレーナーを東京から呼んで、最後の調整に余念がなかった。
そんな中で、城島が不満気に語ったのが、周囲がON対決ばかりを取り上げることであった。監督の対決ばかりで、選手の顔が見えてこないというのだ。
「だって、やるのは選手じゃないですか。優勝したのだって選手がやったのですよ」というわけだ。そして「ウチの選手たちは、巨人を倒すことで全国区になれると思っているのですから」というのだ。
王監督はそんなナインたちを頼もしく思っている。「へー、そんな反発があっても結構だよ。やるのは選手なんだからネ。監督は前面に立つものじゃないから」と選手に対して、前に押し出て、売り込むことを勧めていた。
昨年までの王監督は、自らが前面に立ち、チームを引っ張っていた。今年の王監督は、後半から選手を前面に押し出して、後方支援で勝ち続けた。だが、相手が巨人の長嶋監督となれば、いやが上でもON対決ばかりが取り上げられる。そんな中で、起き上がってきた選手たちの反発(?)。「その元気のよさは昨年の自信からくるものだ」と王監督は大歓迎したのだった。
宮崎に行っていたスコアラーからは、巨人の左投手勢は本調子でないという情報が上がってきているし、黒潮リーグで高知に行っていた井口が復調して、完全になって戻って来るという知らせが入ってきている。
「ウチは右投手でも、左投手で対応できるだけの戦力はそろっているし、データもよそからもらっている」と黒江助監督は、巨人のマル秘情報を入手したのか、自信たっぷりであった。さしずめ今季限りでダイエーを去り横浜のヘッドに入閣がうわさされていることから、そのあたりからデータを入手しているのかもしれないが…。
「ビデオは、ぼんやりと何度も何度も見ているうちに、頭の中に入ってくるもの。コーチが余分なことを言わなくてもいい」と秋山らは、ビデオ中心のミーティングについて、その効用の大きさを説明している。
昨年、このビデオミーティングで、中日の川上、山本昌の欠点を見つけ出しているだけに、城島は今年も強気。「オレたちが打って、監督より大きな活字にする」と真顔で言っていた。「あと12日がんばれば、ウンと体を休められるので、やるっきゃない」という松中。
選手主導の大人になった集団に、王監督は最後の調整段階から、選手を前面に押し出すことを決めている。日本シリーズまであと4日だ。
(スポーツジャーナリスト・永谷脩)
[夕刊フジ2000年10月18日]