王監督が長嶋の“病気”再発を熱望!



いよいよカウントダウンが始まる、世紀のONシリーズ。2年連続日本一を目指すダイエー・王監督は、6年ぶりの日本一奪回に血眼の巨人・長嶋監督の“清原こだわり病”再発を熱望している。その舞台裏を明かす。

4日にも決まる、ダイエーの2年連続のリーグ優勝の舞台は最高だ。宿敵の西武相手で、しかも本拠地・福岡ドームだ。

王監督にとっては文句の付けようのない胴上げになるが、歓喜は一瞬だろう。監督就任以来、中内オーナーから出され続けていた至上命令のONシリーズに勝って初めて狂喜乱舞できるからだ。

長嶋巨人を倒しての2年連続日本一へ。そのためには西武を倒し、リーグ連覇してもなお旧西武コンビとの戦いになる。

巨人・王監督時代に巨人入りの道を閉ざされてから、遺恨を抱き続ける清原。そして、「今季、前半戦のMVP」と、長嶋監督が認めたマルティネスがいる。

同じ一塁のポジションだから当然といえばそれまでだが、ペナントレースでの2人の明暗は鮮烈だった。前半戦、天国のマルティネスvs地獄の清原。後半戦は一転して地獄のマルティネスvs天国の清原になってしまったのだ。

その勢いの差で、シリーズの一塁・清原は既定事実のように扱われている。マルティネスのスタメンは、DHが使える福岡ドームでの第3−5戦しかないというのが大勢だ。

それどころか、巨人OBでもある三冠男の落合博満さんなどは「シリーズに限って4番・清原にすべき」という、4番・清原説をスポーツ紙上でぶち上げている。

巨人首脳陣は、この清原4番説を全面否定している。

「そんなことをしたら、シーズン通して4番で頑張ってきた松井がガックリしてしまう。シリーズ用にオーダー変更などあり得ない」と、あるコーチは語気も荒く言い放つ。

なぜムキになって否定するのか。“清原こだわり病”とまでいわれる、長嶋監督が、周囲にあおられ、その気になったら、一大事だからだ。

ところが、王監督とすれば、4番・清原は大歓迎になってくる。清原が前面に出てくれば、マルティネスの出番がそれだけ減るからだ。この旧西武コンビに対する王監督の評価は天と地の差がある。

FAで念願の巨人入りして4年目の今季後半戦になってからようやく清原は大爆発した。球宴での一発を目の当たりにした王監督は、「構えが柔らかくなり、自然体で打てるようになった」と、清原のひょう変ぶりを認めた。

が、その一方で「打撃技術そのものはたいして変わっていない」と断言。2年間、実際に戦った西武時代の清原と大差がないことを明かしたのだ。

巨人入り4年目の突然変異は、気持ちの問題。「清原のケガで優勝の要因が増えた」という渡辺オーナーの発言などによって追い詰められた、精神面の開き直りの成果と診断したのだ。

ところが、マルティネスは違う。世界の王が最大限の賛辞を呈する。

「マルちゃんが西武からいなくなったから、ウチは優勝できた。ここ一番でよくやられたからね。バッティングは本当に素晴らしいものを持っている。今でもなぜ西武がマルちゃんを切ったのかわからない。シリーズで守るところがないといっても、リーグ優勝しなければ、シリーズに出られないんだからね」

そんな一大脅威のマルティネスの出番が減れば減るほど、王ダイエーの2年連続日本一の確率が高まる。長嶋監督の“清原こだわり病”再発を願うのは当然か。

[夕刊フジ2000年10月3日]