巨人・長嶋監督の続投は決まったが、リーグ連覇カウントダウンのダイエー・王監督の去就は依然として微妙で注目されている。そんな中、NHKが王監督の獲得に動いていることが発覚した。
衝撃的な情報の出所はテレビ局関係者だ。
「NHKの上層部が王監督の獲得に動き出している。長嶋監督も勇退すれば、獲得に乗り出す用意があったようだが−」
今、日本国中が待ち望んでいるONシリーズ。その主役の長嶋監督、王監督2人とも獲得というNHKの仰天計画は、長嶋監督の続投決定で幻になったが、王監督へのアプローチだけでも興味津々だ。
というのも、5年契約の最終年の昨年、日本一になった王監督は新たに2年契約しながら、「自分自身は1年契約だと思っている」と、明言しているからだ。
ダイエー監督に就任する前はNHKで解説者をしていた縁もある。そのNHKの上層部が動き出したということは、どういう意味を持つのか。
リーグ連覇、中内オーナーが念願としていたONシリーズを実現したら、勇退する。王監督がそんなシナリオを描いていることを、NHKがキャッチしたと考えるのが常識的な解釈だろう。
実際に、ダイエー内部でも「これ以上、ダイエーにいても王監督は傷つくばかり。辞めた方がいい」と、王監督に勇退を勧める声があがっている。
脱税事件、スパイ疑惑騒動。そして、今年は日本シリーズの日程期間中に福岡ドームを脳神経外科学会に貸し出すという前代未聞の大失態。ダイエーフロントのお粗末な対応は世界の王を傷だらけにしている。
しかも、昨年、日本一になったのに、契約更改で最初は王監督にダウン提示をする非常識な行動を取っている。ダイエー内部から王監督へ勇退を勧める声があがるのも当然だ。
NHK側はこんな情報をすべてつかんだ上で、上層部が動き出したのだろう。これで王監督の去就が一段と注目されることになるが巨人・長嶋監督にとっても他人事ではない。
読売首脳の間では、王監督は「だれもが納得するポスト長嶋は王監督しかいない」という、ポスト長嶋の切り札になっているからだ。
長嶋監督自身としては、原ヘッドコーチを後継者として考え、禅譲路線を敷こうとしている。それだけに王監督の動向に無関心ではいられないだろう。
マジック5。胴上げカウントダウンの王監督。優勝Xデーとともに、去就表明の瞬間が注目されることになる。
リーグ連覇を決めたときになるのか。それとも日本国中が関心を寄せるONシリーズが終わってからになるのか。
そして、結論は? 同じくフロント首脳に対する不信感から勇退も考えた長嶋監督は、結局、続投要請を受けたが、王監督はどう決断するのか。
続投となれば、21世紀のスタートもONがプロ野球界の主役になるが、勇退となれば、ポスト長嶋の一番手に躍り出る。古巣・巨人にも影響を及ぼす王監督の去就だ。
[夕刊フジ2000年09月27日]