大阪での激戦を終えた王監督が福岡空港に降り立ったちょうどその頃、巨人の逆襲が始まり、そして、2発でサヨナラV。劇的なそのシーン。これが巨人の恐ろしさ。古巣の力。王監督がうなった。
「ジャイアンツらしい優勝の瞬間だったね。でもこれで、念願のON対決が半分実現したよね」
ダイエーの監督に就任して、今季が6年目。巨人の黄金期を支えた両雄が、両リーグに分かれて指揮を執る。いつかONで日本一を争ってほしい。ファンの声が聞こえてくる。期待を感じる。
しかし、連覇を目指す今季、エースだった工藤はくしくも巨人へFA移籍。シーズン序盤、正捕手の城島は骨折。片や巨人は松井、高橋由、清原、マルティネスに、江藤までも補強。巨人は勝てる。でも、今年のウチは…王監督の正直な心中だった。
「オレも、ファンの期待は分かっていた。でも、巨人は戦争でいうなら、上陸前にまず海岸線の遠くから大砲でドーン。目標物を全部破壊して、その後にまた戦車でドーッて感じだろ。逆にウチの今年は、どうやって上陸しようかという戦力だった」
しかし、今季5割を割ったのは、4月のわずか2日間。今月に入り、9連勝で突き抜け、この日も4点のビハインドをはねのけ、近鉄に延長十回、逆転の3連勝で、マジック『6』。こちらも、連覇目前だ。
「この世界では、4月から戦って、ペナントで優勝することに、意味があるんだ。でも、周りの皆さんは日本一というのを、すごく評価する。ウチがまた日本一になるチャンスはある。チャンスがあるなら挑んでいかないとね」
万年Bクラスのチームを常勝チームに成長させた王監督。その自信と誇りを胸に、必ず勝つ。それが巨人へのメッセージだ。
[サンケイスポーツ2000年9月25日]