後半戦に入った直後、ダイエーは快調に飛ばしていた。貯金も最大で14までふくらんだ。それが、フロントの前代未聞の大失態で暗転。日本シリーズ期間中に福岡ドームを他の行事に貸し出す。この事件が発覚してから、チームの成績は1勝7敗。力尽きたかのように勢いを失った。
29日の試合後には、選手だけによるミーティングが開かれた。選手会長の小久保は「まだあきらめる段階ではない。みんなの気持ちを1つにしていこう」と呼びかけた。
“首脳陣排除”という形式にも、王監督は「きょう(30日)は何か違うものを見せてくれそうだね」と、むしろ頼もしさを感じているようだった。
しかし、一度下がった士気は簡単には戻らなかった。試合は九回に1点を返しただけに終わった。さすがの王監督も、試合後は「手も足も出ない感じだ。点を先に取らなきゃいかんのに取れんし、ミスも重なる。ピッチャーも中身が良くない」と、前向きな材料を見つけ出せなかった。
残り試合が25となっての3.5差。現実的に、逆転は厳しい。西武との直接対決は5試合。本来なら「5試合も残っているのだからまだ分からない」と言えるケースなのだが、ダイエーは西武に7勝14敗と一方的にやられている。そのため、「5試合も残っていては差は開く一方だ」としか考えられない。
今季の王ダイエーは、ONシリーズの実現へ突き進んでいた。しかし、その大切な舞台を、フロントが売り飛ばしてしまっていた。「球団は優勝したくないでしょ。こんな状態で日本シリーズに出れば、コミッショナーから制裁金は取られるし、年俸は上げなきゃいけない。(優勝をせずに)最後まで球場が満員になるだけにしたいんでしょ」。選手たちの声を、ひがみとは受け取れない。西武でなくフロントに息の根を止められた、悔しさが伝わってくる。
フロントからこんなひどい仕打ちを受けても、王監督は「発展途上のチームだから色々なことが起こる。それだけやり残していることもある、ということだよ」と、決して見捨ててはいない。もちろん、その言葉の裏にある怒りや本音を、推測はできても知ることはできないが…。
[夕刊フジ2000年08月31日]